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7月20日 ハンバーガーをがぶっと【今日のものがたり】

 所長の伊出(いで)さんはハンバーガーをとてもおいしそうに食べる人だ。ものすごく分厚いハンバーガーも両手で持ってそのままがぶりといく。ハンバーガーのCMに出られるんじゃないかなって食べているのを見るたびにこっそり思っている。

「なんかあった? 鮫(さめ)さん」
「いえ! いや……伊出さんはいつもおいしそうにハンバーガーを食べるなと思いまして」
「あ、そう見えた? 実際にこのハンバーガ
ーめっちゃおいしいのよ。戸村ベーカリーのバーガーなんだけど」

 戸村ベーカリーって確か、伊出さんのお姉さんご夫婦が経営しているパン屋さんだったはず。

「そうだったんですか。ということはバンズにこだわりがあったり……」
「お、鮫さん、目のつけどころがいいね! そうなんだよ、バンズをいろいろ試行錯誤したみたいでね、僕も試作品をたくさん食べたんだ……って、あ、言っちゃった。でも、鮫さんになら大丈夫か」
「今度私も食べてみたいです」
「そうだよね、ごめんね。気が利かなくて。鮫さんの分まで買ってくれば良かったよね」
「いえいえ! とんでもないです」

 伊出さんがおいしそうに食べている姿を見られただけでもお腹いっぱいな気分になりますから……。

「ところで鮫さんは恋人の前でこういう分厚いハンバーガー食べるの平気な人?」

 突然の質問に私はうろたえてしまった。こ、恋人の前で? ハ、ハンバーガー? ……そうか、そうだよね、そういうこともなきにしもあらず……なのか……。

「……えーと、相手も同じようなハンバーガーを食べるのなら大丈夫かなと……」
「なるほど」

 うーんでも、やっぱり少し恥ずかしいかな? でも、お互いが食べたいものなら平気なような……いや……

(そういうシチュエーションになったことのない私には若干想像外の話だ……)

「い、伊出さんは大丈夫なのですか?」
「僕? 僕はごらんの通り、エブリタイムOKだよ。ハンバーガーはこうやってがぶっといくのが醍醐味でしょう。あーうんまい」

 エブリタイム……この表現にツッこんだほうがいいのか、さりげなくスルーでいいのか……でも、うん、今日も素敵な伊出さんの食べっぷりを見られたから良しということで。午後の仕事も頑張れる。

 でも、どうして恋人の話になったんだろう?

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