8月30日 その明るい笑顔が【今日のものがたり】
「ありがとうございましたー!」
パパとママが作ったおいしいパンを買ってくれた女の子。彼女はつい先日まで、船で旅をしていたんだよ! 私の国では船に乗るには試験を受けなきゃいけなくて、タダでは乗れないの。それをパスして、もう何度も乗ってるんだよ? すごくない?
その子が今回の船旅話をしてくれて、私の心はドキドキいってる。なんだか私まで冒険家になったような気分で……はぁ~どうしよう。私も船に乗るための勉強始めようかな。なんて、隣町にさえなかなかいけないでいる私が何を言うかって話だよね。でも、海は見てみたいなぁ。
そうだ、ドリスコルさんにこの話を聞いてもらおう。楽しいお話だったから、ドリスコルさんも元気になれるかもしれない。さすがに主食レベル、とまではいかなくてもおやつくらいになれたら嬉しいな。
部屋へ行くと、ドリスコルさんはベッドから起きあがり、本を読んでいた。読書の邪魔はいけないかなと思ったけど、どうぞと言ってくれたので、私は中へ入った。
「あの、ドリスコルさん、船旅の話をしてもいいですか?」
「船旅?」
「そうです。あ、私が体験してきたことではないんですが、とってもおもしろかったのでドリスコルさんにも教えたくて」
「……聞かせてほしいな」
「ありがとうございます!」
私は自分でも早口になってるかもって感じるくらい、さっき聞いたばかりの話をドリスコルさんに身振り手振りを交えて……というか、自然に手も身体も動いちゃったんだけど……。元気になったらドリスコルさんも船に乗りたいって思ってもらえたら良いなと思いながら話を続けた。
「……なんだか君が船に乗ってきたかのようなリアリティがあったよ」
「え、本当ですか? 嬉しい」
今日のドリスコルさんは顔色も悪くないし、今は穏やかに微笑んでくれているし、うん、良かった。
「……君のその明るい笑顔に私は救われている。ありがとう」
「え、え……と、その……こちらこそ、ありがとうございます」
私はただ、おもしろい話を聞いて、それをドリスコルさんに話して、元気になってくれたらって思っただけだから……私だけじゃなくて、船旅をしてくれた子に感謝だね。ありがとう。