3月13日 やきそばをふたりで……【今日のものがたり】
プラスチックのケースの中には、こうばしい香りのやきそばが入っている。この食欲をそそる絶妙な匂い。たまらないよね。
僕はお皿を二枚用意する。
「大地(だいち)、ちょっと待って」
光(てる)ちゃんがキッチンからボウルを持ってくる。
「これ入れてかき混ぜてからで」
ボウルの中身は大量の野菜だった。キャベツにタマネギ、にんじん、もやし、お肉まであった。
僕が買ってきたカップのやきそばは、具材がないわけではないけど、それだけだと確かに少し物足りない。
光ちゃんが炒めてくれた野菜を投入する。すごい、ケースからはみ出そうなぐらい具だくさんになった。
「このやきそばの『ペヤング』って、『ペア』と『ヤング』から来てるんだってね。若いカップルに仲良く食べてほしいって意味みたいだよ」
「そうだったんだ」
「光ちゃんと僕。まさしく僕たちのような食べ方ってことだよね」
自分で言って、なんだかすごく心がほっこりしてきてしまった。そうか、僕は学生時代……
「これひとりで食べてたんだよなぁ。その名残で今日みたいに無性に食べたくなるときがあるんだよね」
しかもこうして、光ちゃんが野菜を追加してくれるなんて。本当にありがたい。今度は僕もちゃんと料理を作ってごちそうしないとね。あんまり自信はないのだけど。
「もしかして、容器が二つになってるのも分けるためなのかな?」
「え?」
「ほら、これ」
光ちゃんが持ち上げた容器は半透明で、本体が残っていた。
「えー僕、今まで何度も食べていたけど分かれるなんて全然気づかなかった……」
「そうなると、お皿に分ける必要もないかも? お皿洗う手間省けるし、これ利用しちゃおう」
「そうだね」
本来はそういう目的ではないのかもしれないけど、これはこれでありだなーと思うので、お皿は脇に寄せる。
では……
「いただきまーす!」