10月12日 私のPR方法【今日のものがたり】
私は電車に乗ったりカフェに行ったりしたとき、まわりの人が読んでいる本が気になってしまう。
もちろん、ジロジロ見たり横目で覗き込んだりしたら、それはただのあやしい人なので、そこまではしない。自然な姿勢で見える、そう、だいたいは表紙を見ている。視力はありがたいことにすこぶる良い。
とは言うものの、カバーがかかっていることが多いので、本の種類より本屋さんの確認になっているような気もする。それはそれで興味深いのだけど。
私はというと、基本カバーをつけずに読む。読んでいる本を宣伝したい気持ちがあるからだ。今、読んでいるのは……え?
(わ、私と同じ本を読んでいる人がいる……!)
飛び上がりたい気持ちをなんとかこらえ、私は自分が今、震えながら手にしている本と、視界に入り込んできた本を見比べる。
斜め向かいの席にいる、間違いなく私と同じ本を読んでいるのは……制服から判断して、このあたりの男子高校生。
(まさか、伊出所長が初めて書いた占い本を今、このタイミングで読んでいる人がいるなんて)
あの子も占いに興味があるのかな。そうだとしたら嬉しい。所長の書いた本は堅苦しくないし、占いというものをより身近に感じられる素敵な内容だから。
この同じ空間で、同じ本を読んでいる人がいる奇跡。この喜びを必ずや明日、所長に伝えよう。次作執筆のモチベーションもあがるはず。そのときの所長を思い浮かべて私は笑顔になる。
よし、本の続きを楽しもう。
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