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2月2日 2連ヨーグルトが見守っている【今日のものがたり】

 納得いかないことがあって扉を開けたら冷蔵庫は空っぽだった。
「そうだ……おととい鍋に全部入れて……」
 あのとき、冷蔵庫をきれいにしたくなるモードになっていて、すっきりできて喜んでいたのに。
 このままでは夕食が作れないのでスーパーへ行くことにする。作れないと考えつつも、心は作りたくないに傾いているので、今日はスーパーにあるお総菜にしようと決めた。
 あとは、いつも食べている梅干し・納豆・卵・めかぶ・ヨーグルト……このあたりの個人的定番ものも買わないと。
 納豆はこのところひき割り率が高かったから極小粒にして、ヨーグルトはアロエだ。
 冷蔵庫に買ってきたものをしまう。まだ全然スカスカだけど、入れすぎるよりはいいだろう。
 
 インターホンが鳴った。僕だよ~と聞き慣れた声が聞こえてくる。とたん脱力した。私は大きく息をはいて玄関へ向かう。
 扉を開けると、きらきら~と擬音が聞こえてそうな顔で大地(だいち)が立っていた。再び力が抜けそうになるがこらえる。
「今日くるとはいい度胸じゃない」
 大地はさも当然のごとく中へ入ろうとするが、私はそれをとどめる。
「光(てる)ちゃんまだ怒ってるの?」
 少しは私の気持ちがわかっているようだ。でも、少しだ。
「まだ、じゃないから」
「そんなにあのアイスクリーム食べたのダメだった?」
「ダメだった。あれは、私が一週間仕事がんばったご褒美に買っておいた特別なアイスクリームだったの!」
「えーそれじゃあ、そうメモに書いておいてよ~」
「いやいや、食べる前に私に一言いってくれれば、食べないでって絶対言ってたから」
 私は大地の眼をいつもの三割り増しで強く見つめる。
「……光ちゃんごめんなさい。でも、ほらこれ、同じもの買ってきたから、ね?」
 ……なんで、そんなニッコニコ顔で……嬉しそうに言うかな!
 私は渋々、大地を部屋へ入れる。

「アイスクリーム、冷凍庫に入れておくね」
「うん」
 この時間に来たということは今日は泊まっていくつもりなんだろうな。紅茶じゃなくてコーヒーでも入れるか。
「あ、アロエヨーグルトがある! 買っておいてくれたんだ」
「え? 私、ヨーグルトなんて買ったっけ?」
「ほら、この2連になってるいつものヨーグルト」
 ……しまった。いつものクセでかごに入れてたわ……。
「僕のお気に入りのヨーグルト。いつもありがとね」
「……あなたのためだけじゃないから」
 私もそのヨーグルトが好きだから買ったまで。
「僕は嬉しいよ。そうだ、そうだ。この2連ヨーグルトって夫婦とか親子で仲良く食べてほしいって意味が込められてるんだよね~」
「へぇ、そうなんだ」
「光ちゃん、知らなかった? 僕たちにぴったりじゃない」
 大地はいつもそうだ。私が怒っていても穏やかで、なんか、こっちが怒っているのがしょうもないことに思えてきて……ま、いっか……って気持ちにさせてくれる。
「コーヒーも沸いたし、今から二人でアロエヨーグルト食べようか」
「うん。僕たちもうすぐ夫婦になるし、これからもこうやって一緒に食べようね。コーヒーもありがとう」

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