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2月8日 あなたは白い椿【今日のものがたり】

「椿の花言葉を知っているかい?」
 私は怠惰な時間をつぶしてくれる書物を手に取り眺めている。
「本日はスイートピーではないのですね」
「ああ、椿だ」
 椿の花の色は一つではない。赤、白、黄色。ピンク、黒色の花もあるという。書物に描かれているものを見ているだけだが、何とも魅惑的な香りのする花だ。
「その花はこの国では咲かないものでございましょう」
「よく知っているな。どうやらここから遠く離れた国で咲く花のようだ」
 私もいつか行けるだろうか。魔界から椿の花咲く世界へ……。

「何か理由を付けてその国へ行こうとお考えですね」
「よくわかったな。なぁ、この国へ行かねばならぬ仕事はないか」
「ないですね」
「早いな。しかもそんなきっぱりはっきり『ない』と言えるのか」
「魔王様がかの国へ赴いたら……生きて帰っては来られぬかも」
「な、んだと……」
 椿の花言葉には怖い意味もあるといった部分を呼んでいたところだったからか、背筋に寒いものを感じてしまった。いつ以来だろうか、そんな恐怖のような感情を抱くなんて……。
「そういうわけですので、本日もきちんとお仕事して下さいませ」
 気配を感じたわけでもないのに、ふと後ろを振り返ってしまう。いつもと変わらない壁があるだけでおかしなところは何もなかった。安堵するが、どうにもひっかかる。
「なぁ、なぜ生きて帰ってこられないんだ? これでも一応、魔王としての力はそれなりに持っているぞ。それはジョセフだって知っているだろ」
「持っていても、敵わないこともございます」
「そんなに恐ろしい国なのか」
「生きて帰ってこられないと言うのは怖い意味だけではありません」
「どういうことだ?」
「さ、そろそろお仕事をいたしましょう」
 ジョセフはたまに、いや、よくこうやって本質を言わず私を煙に巻く。

「ちなみに私は、魔王様のことを白い椿のようだと思っておりますよ」

 その、花言葉は……

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