2月17日 天使のささやき 悪魔のささやき【今日のものがたり】
「スノーフレークの花言葉を知っているかい?」
昨日、あれだけの大量の書類を捌ききったというのに、なぜゆえ書類というものはなくならないのだろう。
私は最近思う。そんじょそこらの奴らより、この一枚の紙切れのほうが強大な敵に思える。しかも私に直接手を出してくるわけでもないのに、日々生み出され、私を悩ます。
「早く取りかかればそれだけ自由なお時間もできますよ」
「そういうけどな、ジョセフ。私はこう思うのだ。早く取りかかって、早く終えたら、翌日でもいい仕事を前倒しにされるのでは? とな」
早いことが悪いとは思わないが、どうにもそんな気がするのである。
「考えすぎでございます」
「そうか? 適度な早さで作業し、花言葉を考えるぐらいの休息を取り入れつつやるほうが効率的ではないか? どうせ、城下に遊びに行かせてくれないんだし」
「……それは魔王様にとって、天使のささやきなのか、悪魔のささやきなのか……」
「ささやき? どういう意味だ?」
「どういう意味でしょうね」
ジョセフは訳ありげにほほえむだけで、それ以上は何も言ってこなかった。よくわからんやつだ。
「それで、スノーフレークの花言葉なんだが……」
「『皆をひきつける魅力』をお持ちの魔王様ですから、お仕事もぱぱっとこなして下さると信じておりますよ」