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2月25日 ひざ関節には魔法の力を【今日のものがたり】

 雨が降らなかったので、予定よりも先の町まで来ることができた。けれど、少し歩きすぎたようだ。
「足が疲れた~」
 僕はお食事処「バックランド」さんで休憩することにした。前に立ち寄った町で、ここのホットケーキが絶品だと聞いていたのだ。お店を切り盛りしているのはポニーテールが似合うお姉さんだった。

「おにいさん、声に出してしまうくらい疲れただなんて、どのぐらい歩いてきたのですか?」
 お姉さんに問われたので、その距離を伝えたら、ホットケーキを作る彼女の手が止まった。
「それは、疲れますね……。ようし、ここはひとつ、特大ホットケーキにしますね」
 お姉さんはホットケーキの生地を足し、かき混ぜまくる。
「ありがとうございます!」
 それだけでなんだか、足の疲れがとれたような気がしてくるから不思議だ。

「でも、おにいさん、あれはつけていないのですか?」
「あれ……とは、あれ、ですか?」
「おそらくその、あれ、だと」
 僕は頷きながらズボンをたくしあげる。見えてきたのはひざに巻かれた……
「ひざ関節を保護してくれるスペシャルサポーター。もちろんつけてますよ」
「ですよね。この町でも話題になっているんです。特殊な魔法が編み込まれていて、疲労を軽減してくれるという効果が実証されたアイテムだと聞きました」
 僕は両足につけている。旅の供として重宝しているものの一つだ。
「でも、そこに使われている魔法は人の骨とか筋肉に作用する特殊な力だから、特別な許可なく扱えないのですよね」
 そう、だからお値段は少々張るのだ。
「お姉さん、詳しいんだね」
「私、これでも魔法使いなんです。まだまだひよっこですけど」
「魔法使いで、おいしいホットケーキも焼けるなんてすごいじゃないですか」
「ありがとうございます。このお店も大魔法使いになるために、とても大事な場所だと思っていて、大切にしています」
「大魔法使いかぁ。いい夢だね。いつか僕も、パーティを作れるくらいの旅人になれたら大魔法使いを仲間にしたいなぁ」
「そう言ってもらえるとすごく励みになります。特別にアイスクリームもつけちゃいますね」

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