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1月30日 3分間電話で近況報告【今日のものがたり】
ちりん、ちりん……
鈴の音が聞こえてきた。こちらも鈴の音でこたえる。
ちりりん、ちりりん……
「もしもし、お元気ですか?」
「元気ですよ。お宅はどうですか」
「おかげさまで、こちらも元気にやっております」
「それは何より」
声は嘘をつけない。だから本当に元気にやっているとわかったのでホッとする。今度こそ幸せになってほしい。
「最近、何かおもしろいことはありましたかな?」
「おもしろいことですか。風が吹いて木々が揺れて、その揺れている音を聞いているだけでやさしい気持ちになりますなぁ」
「それはとても素敵なことです」
「あとはこたつで寝ることです」
「おや、それはそれは……」
「なかなかやめられません。きちんと布団の上で寝るのがより良き睡眠となるのはわかっておるのですが」
「お気持ちはわかります。私もこたつは大好きですから」
こたつを発明した人にお礼を言いたいくらいである。
「そうでしたか」
「冬の時季だけのスペシャルアイテムだと思うことにしております」
「たしかに、たしかに。この時季だけですものな」
「だから、良いのですよ。たまにはこたつで寝てしまっても」
「強制的に出されるときもありますからなぁ」
「ふふっ。ですなぁ」
でもそれが幸せだったりもするのだ。ぬくもりはこたつだけではない。ありがたいことに。
「雪が溶けたらまた会いましょう」
「そうですな。いつもの場所でよろしいですかな」
「はい。いつもの場所で」
「長い時間はいられないかもしれませんが」
「いえいえ。お姿が見られるだけでも嬉しいですので」
「ありがたきお言葉。私も同じ気持ちです」
「……音が聞こえましたぞ。帰ってこられたのでは」
「そのようですな」
「ではまた、お話しましょう」
「はい、それまでお元気で」
ちりん、ちりん……
ちりりん、ちりりん……
「こらーまたこの子機たおしたでしょう」
ご主人さまのお帰りである。
私は何食わぬ顔で電話から離れる。子機を倒して通話可能にする。そのぐらいは私にだってできる。
「ニャー」
「……そんな、かわいい声ですり寄ってきて許すわけ……く……っ、今日も敗北か……っ」
かわいいご主人様のもとで私は幸せな生活を送っている。