3月2日 出会いはラナンキュラスとともに【今日のものがたり】
「ラナンキュラスの花言葉を知っているかい?」
「仕事をしたくないときにそうつぶやけばすむとお思いですね」
「な、何を言う! そんなわけないであろう」
ううむ、やはりこのパターンはそろそろ見送らないといけないかもしれぬな。私としては花言葉を考えるのは素敵なことだと思うし、花を思うこともすばらしいことだと思っているのだが。
「花は美しいものです。ですが、しっかりと仕事をこなすこともまた、美しきことだと私は思いますよ」
「とはいえ、毎日毎日インドアな仕事というのは気が滅入る」
「魔王様が何をおっしゃいます」
「外の仕事はないのか」
「……ございますね」
「なに? あるのか。決まっていることなら早く伝えよ」
「こちらは本日入ってきたお仕事でございます」
「外へ行けるのか」
「……なんだかまるで、外での出会いを求めているような瞳の輝き……」
「魔王である私が人と出会うのは必然。それにより、よりよき魔界が構築できよう」
書類をチェックするだけが魔王の仕事ではない。それだけは確かなはずだ。私はジョセフの言葉を待つ。
「……『晴れやかな魅力を持つ』魔王様ならもしかしたら……」
「外へ行けるのだな」
「はい。ついに決まったようです。世界会議が」
時は、来た。
目の前の書類など、まばたきするぐらいの速さですませてみせよう。
実際は一日かかるのだけどな。
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