11月11日 サムライカフェ【今日のものがたり】
「七生くん、サムライみたいだね」
着物を着た俺を見あげながらの七海ちゃんの感想である。
「いやいや、サムライはもっと洗練されてて男前でしょう」
「いやいや、七生くん、男前だと思うよ」
「……これは、ありがとう、なの、か?」
実の弟を男前だと言ってくれる七海ちゃんは優しいなぁと思う。自分ではただデカいだけの男という感じなのだが。
「学園祭で着物を着てくれるなんて楽しみだなぁ。でも、そのサークルの人たち、よく七生くんを見つけたよね。大学構内では着物着ていないのにね」
「そこなんだよ。サークル内に俺の友人はいないのに、講義が終わったあとに声をかけられてさ」
「給仕係が着物を着る“サムライカフェ”をやりたいから着物をレンタルしてもらえないかって相談だったんだよね」
「そう。ま、デカいから見つけやすかったのかもな」
「あはは。でも、うん、それはわかる」
そして、なぜか、そのサークルのメンバーではない俺もカフェの店員さんとして加わることになったのだった。着付け係としての意味合いもあるとは思うが。
「当日は遊びに行くね、遥くんと」
「粗相のないように気をつけます」
「えー七生くんはしっかりしているから大丈夫でしょう」
「呉服屋の人間としてもしっかりとした立ち居振る舞いをしないとだし」
「う……それを言ったら私もだよ」
「七海ちゃんは週末は着物着てるし、いつも所作がきれいだと俺は思ってるよ」
「七生くん、ありがとう。そう言ってもらえると自信になる。あーホント、当日が楽しみになってきた! お天気も良くて着物でお出かけ日和になるといいなぁ」