2月4日 にしにあるものは【今日のものがたり】
ひとつの手は打った。それでなんとかなる、なんてことは思ってはいないが、なにかしらのアクションは起こるはずだ。
しかし今の俺は信じられないくらいアクティブだ。自分でアクティブだといえるなんて、俺史上初めてかもしれない。
今回は占い師に頼ってみることにした。俺の家から少し離れたところに小さな村があるのだが、そこにどうやらいるらしいのだ。これまで占いなんてものを信じたことはなかったが、目的のための手段としてなくはない、と考えるようになった。目的のためならどんな方法でも試してみる。今の俺の考え方だ。
「西へ向かいなさい」
占い師は言った。西の方角に幸があるという。幸……あの魔法のアイテムを作りし御方か! 俺はとっさにそう思った。そうと決まれば行動を起こすのみ。しかし、この村にいる占い師は一人ではなかった。他にもいるということは見過ごしてはいけないということだ。人生何が起こるかわからない。ならば、別の占い師の話を聞くことも必要だろう。
「西へ行ってはいけない」
……なんだと……。行ってはいけない? 西へ行けば地獄を見ると。地獄とはなんだ。今ですら、このままだと地獄を見るかもしれないのに、さらなるそれが待ち受けているというのか。西には魔法のアイテムがないということなのか。
人の考え方は様々なのだろう。皆が同じであれば、占い師なんて一人もいらないはずだ。悩むから、彼らはいるのだろう? その悩みを占いという光を持ってあるべき場所へ導いてくれるのではないのか。
……いったいどうしたんだ俺は。まるで前から占いに頼っているような思考ではないか。
これは、まずいな……。あのアイテムの効果が薄れてきているのかもしれない。思えば……身体が心がほしがり始めている。
血を。
吸血鬼はこれだから困る。
あの御方は読んでくださっただろうか。新聞を毎日読んでくださる人だろうか。
このまま外にいては危険だ。何をしでかすかわからない。家へ帰らねば……そう考えていられるうちに帰らねば……。
ここから自宅は……まさか、そんな……。
家のある方角は西。
そこにあるのは幸か地獄か。