11月27日 組立家具を図書室においたら【今日のものがたり】
「このカラーボックスを図書室に置きたいです!」
僕が勤務している山穂図書室の常連さんである、白倉 灯里さんが小さめの四角いボックスを抱えてやってきた。
「工作教室で作ったんです」
一緒にやってきたのは灯里さんの兄である、灯馬くんだ。彼も灯里さんと同じようなボックスを抱えている。
「僕のは家に置いとこうと思ったんですけど、灯里が2つあればクリスマスカラーになるからって……」
「わたしの作ったのが赤色で、お兄ちゃんのは緑だから。クリスマスっぽいでしょ?」
「まぁ、確かにクリスマスっぽいとは思うけど……」
2人の会話を聞いて僕はカレンダーを確認する。図書室には2ヶ月で一枚のカレンダーが貼ってある。そうか、12月はクリスマス……。
「てるてる先生、本の邪魔にならないようにするから、ボックスを置いても良いですか?」
思えば七夕もハロウィンも、僕はなにもせず、ただここのカウンターにいただけだ。本来なら、いや、去年までは季節に合わせた装飾をほどこしていたのかもしれない。気づかせてくれた2人に僕は頭を下げる。
「灯里さんも灯馬くんもありがとう。2人のおかげでここもクリスマスを迎えられそうです」
「わーい! じゃあ、このボックスのなかにサンタクロースとツリーのおもちゃも置いていい?」
「どうぞ」
「やったぁ! てるてる先生なら良いよって言ってくれると思ったから、実は今日持ってきてるんだ」
そういって灯里さんは背負っていたリュックから本当にサンタクロースとツリーのおもちゃを取りだした。
「マジかよ、灯里……」
灯馬くんが頭を抱えながらも灯里さんとともにボックスを窓際の低い棚の上に置く。灯里さんがジングルベルとつぶやき……いや、歌い出す。ここは図書室だぞ、と灯馬くんがたしなめる。図書室はお静かに。なんて、ここへ来てまだ一度も言ったことがなかったなと僕はそのとき初めて気づいた。
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