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11月29日 白さ際立つ服を着て【今日のものがたり】
郵便受けに白い封書が入っていた。宛名はない。差出人の名前もない。でもこれは、私に届いたものだと断言できる。
部屋に戻り封を開ける。ベティさまへ。流麗な字で書かれてあると私の名前も良い名のような気がしてくる。しかし、書かれてある内容はなかなかに不穏だった。けれど、これで決まった。私の新たな“やるべきこと”が。
白魔道士への通達は白い封書でと決まっている。真っ白としかいえない真に白い封書。日差しを受けると目を細めるほどの白。
私はクローゼットからこれまた白いマントを取り出す。白魔道士はどこまでも白にひも付けされている。
魔道士というものに憧れがあった。いつかなってみたい、そのぐらいの淡い夢だった。正直、収入面からいったら、他の職種のほうが稼げる。でも、定期的に“やるべきこと”があれば、一人食べる分には困らない。だから私はこの道を選んだ。
黒魔道士という選択もあった。でも、回復系魔法を主とする白魔道士のほうが、疲れたときにすぐ自分に対して魔法が使えるから便利だよなぁと思った。黒魔道士も回復系魔法が使えないことはないのだけど、白魔道士のように詠唱を省けない。詠唱は魔法の威力を確かなものにするために必要な呪文なのだけど、白魔道士は回復系に限りそれを省略しても同等の魔法力を発揮できる特殊な魔力がある。それは契約によって身内に組み込まれるもので、私は白魔道士として生きていくことを決めたので、詠唱なしで回復魔法を使うことができる。
白魔道士の制服と言っていい真白い服を着て、白さ際だつマントを羽織る。噂には聞いていたけど、あの洗剤、本当に真っ白に仕上がるのね。“やるべきこと”が終わったら、報酬であの洗剤を買い置きしよう。