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8月31日 クローディアヘの宿題【今日のものがたり】
城にいるときも私は本を読んではいた。でもそれは、読まなくてはならないもので、読みたいものではなかった。だから、おもしろいと思えたことはほとんどなかった。
でも私は、クローディアに出会って、おもしろいと思える本にたくさん出会えたの。それはすべて、私が読みたいと思って選んだ本たち。クローディアが管理している書物庫は少し特殊で、外へ持ち出すことはできないものばかり。だから私はこっそりここへやってきて楽しいひとときを過ごしている。私は学べる喜びをクローディアと本たちからもらったの。
あるとき、城のなかで父たちが話し合いをしていてね、今までなら異国の言葉で話しているのかしらというくらい、言葉の意味が頭のなかに入ってこなかったのよ。なのに、その日は、話していることがすべてわかったの。びっくりしたわ。そして、とても嬉しかった。
だから今日は、そのお礼をさせてほしいの。
「私はあなたのことがとても大好きよ、クローディア。だから、私のことも名前で呼んでほしいの」
クローディアは私のことを皆がそう呼ぶように“姫様”と言ってくれる。でも、私にだって名前はあるのよ。私だけの名前が。
「私といるときだけは私の名前を呼んで。あなたとはこれからもこうして楽しく本を読んでいろいろなことを話していきたいから」
急に何を言い出すのかって戸惑っている表情のクローディアがとても愛おしい。
「明日までの宿題ね」
私もクローディアの好きなお菓子を持参するから楽しみにしてて。