12月11日 胃腸だけは繊細だったんです【今日のものがたり】
「戸村くんの胃腸は朝から元気だね」
里子さんが作ってくれた朝食を食べ終えて、僕はコーヒーと共にジェラートアイスを頬張っている。そう、朝からアイスだ。
食べたいものを食べたいときに食べられるのは当たり前のことじゃない。だからこそ今、それができていることに感謝しながらおいしくいただいております。
「でも、僕こう見えて、胃腸だけは繊細だったんですよ」
「繊細……あ、お腹がゆるかったってこと?」
「そうです。学生の頃ですけど、学校着くまでが大変でした。お腹がぐるぐる言い出して、待てお腹。トイレはまだ先だ。あと10分は踏ん張ってくれってさすりながらあの坂道をのぼり……」
ああ、懐かしき青春……!
「昨日の夜に冷えたヨーグルト食べたからかなとか、アイスもちょっと食べちゃったなとか、トイレに入りながらお腹が痛くなった原因を見つけて自分を納得させてたんですよね」
「今の戸村くんからは想像つかないね」
「はい。今はもうバッチ来いですよ」
「どうやって繊細を抜け出したの?」
「それはもちろん、里子さんの愛という名の手料理をいただいたからですよ」
「私の愛か。なるほど」
「え、え、そこは里子さんらしくツッこむところじゃないんですか」
「……たまには真に受けるのも良いかなって」
「……里子さん」
「なに?」
「それはそれでグッドです!」
里子さんの新たな一面が見られたような気がして僕の心が弾む。そう、だから僕のお腹も繊細を脱け出してご機嫌になるのだ。