第13球 走る、ということ

 皆さま、こんにちは。ミルカウズの内野手・藤山 幸亮(ふじやま こうすけ)です。中瀬(なかせ)からの指名で、今回のエッセイは僕が担当します。
 中瀬とはお互いファームの試合に出ていた頃、同じ内野手で同い年だったこともあり、気になる存在でした。僕はサードが本職なので、たまに守るセカンドの難しさに少し戸惑っていました。僕がセカンドでエラーしたとき、相手チームのセカンドはグラウンド状態が悪い中でも堅実な守備をしていて、選手名鑑で確かめたら同い年だと知り、少し驚きました。しかも試合後に彼が居残りで守備練習しているのを見て、話を聞きたいなと思い、声をかけたのが知り合ったきっかけです。
 中瀬は好きなものに対しての熱がすごくて、前回のエッセイで割愛されていたセカンド論は本当に熱いです。いつかどこかで披露してほしいくらいです。

 さて、今回のエッセイですが、「走る」ことについて書いていきたいと思います。僕は今季27盗塁で3年連続二桁盗塁となりました。なので、藤山は走る選手というイメージを持たれている方もいらっしゃるかと思います。僕としても盗塁は武器の一つであると思っていますし、来季以降もいかに先の塁を狙うかという点にはこだわっていきたいと思っています。
 ただ、これからも盗塁数という記録のために走るのではなく、ここで走ったらチームの勝利に繋がる、試合の流れを引き寄せられる、と思ったところで走る選手でありたいと思っています。それは盗塁に限らず走塁でも同じです。

 “走る”というと、一番に思い浮かぶのが“盗塁”という方も多いと思います。僕もそうです。なので、まずはこの盗塁について書いていきたいと思います。
 僕は入団当初、走れる選手だからドラフト指名されたと考えるくらい、足には自信がありました。ですが、それはすぐに打ち砕かれました。盗塁が全然成功しないのです。いけた! と思ったスタートでもセーフにならず、初年度は盗塁成功数より失敗数のほうが多く、すごくショックでした。なので僕は自分の盗塁映像を見たり、成功率の高い先輩の映像を見たり、他球団の盗塁を得意としている選手の映像を見たりして、自分に足りないものは何かを探りました。
 ただ足が速いだけでは盗塁を決めることはできません。スタートを切るタイミング、トップスピードに持っていくまでの時間、スライディング技術……すべてを研ぎ澄まして走り出さないといけないのです。
 僕のことを入団時から見てくれているファンの方は藤山は盗塁が下手だ、という印象があったと思います。なので、一軍の試合に出られるようになり、しかも初盗塁から7回連続で成功したときはあの藤山が! 盗塁を失敗しない?! と驚かれたと思います。僕もこのときはできすぎだと思いました。案の定、そのあと3回連続で失敗しまして……すみませんでした。
 でも、入団時より確実に成功率はあがっているという自負があります。いろんな人に話を聞きました。自分でも考えて、闇雲に走ることだけはしないよう、走るときは確実に決められるとき、という気持ちで今も走っています。
 盗塁で一番大事なのは何か。よく聞かれることですが、僕は準備だと答えます。塁に出たら絶対走ると決まっているわけではありません。でも、走るかもしれないのもまた事実です。僕が塁上にいて、どんなサインが来るのか。走れのサインも一つではありません。どのように仕掛けるのか、いつ走るのか、バッターとの連携もあります。なので、どんなパターンで来ても、僕は走れます、という心構え、準備が大事だと思うのです。

 盗塁に似て非なるものが走塁です。自分が打った打球を見てセカンドまでいけるのか、サードまでいけるのか。野手がホームへ返球している間に進塁できるか。塁上にいるとき、次打者の打球でどこまで進塁するのか。フライがあがったとき、これはタッチアップができるのか否か。これらを瞬時に判断し、できる限り先の塁を目指すことを心がけています。
 盗塁が苦手でもこの走塁は上手いという選手もいます。たとえば、センターやライトにあがったフライで、三塁ランナーがホームへタッチアップするのはよくあることだと思います。でも、同じ条件で一塁ランナーが二塁へタッチアップするのはどうでしょうか。どの位置でキャッチしたのか、そのときの野手の捕球体勢、それらをしっかりと見ていないと走り出すことはできません。なので、盗塁だけでなく、こういった走塁という部分で自分の色を出せる選手もいますので、今後試合を見るときに注目してみてください。


 それでは次回のエッセイもお楽しみに。
 ミルカウズの藤山幸亮でした。


◇藤山幸亮プロフィール◇
ミルカウズの内野手として今季130試合に出場。3年連続二桁盗塁を達成し、成功率も9割とその確実性が評価されている。来季もその足で勝利を呼びこむ。

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