12月12日 5本指ソックスにいいね【今日のものがたり】
「あれ、水琴っていつも5本指ソックスだったっけ?」
生徒玄関で靴を履きかえるとき、ふと水琴の足元に目がいった。指先にクッキーやあめ玉といったお菓子の絵がついている靴下だったのだ。そう、5本指のひとつ一つに。
「最近目覚めた」
「目覚めた……?」
「お父さんが実はずーっと5本指ソックス履いてて」
「そうなんだ。水琴のお父さんって確か給食作ってるんだよね。立ち仕事だからなのかな」
「そうみたい。お母さんも履いてたから」
「……そうなんだ」
水琴の口から“お母さん”という単語を聞くと少しドキッとする。でも、水琴が自然にお母さんのことを話に出せていると考えればホッとする。
「でも、昔は柄ものとかもなくてシンプルなものばかりだったから、あまり興味が湧かなくて。でもこの間、これと同じようなお菓子柄のかわいい5本指ソックスが干してあって」
「え、水琴のお父さんの足のサイズに合うかわいい5本指ソックスもあるんだ」
お父さん確か身長が180センチ超えてるって聞いたことあるけど、足のサイズいくつなんだろう。
「ね。私もかわいいのは子ども用だけかなって思ってたんだけど、調べたらサイズもデザインもすごいたくさんあって」
「実際はいてみてどう? いい感じ?」
「うん。靴下履いてるっていう実感がわく」
「……ほぅ」
「それぞれの指がちゃんと靴下はいてますって主張してる感じ。おさまりがいいというか」
「それは気になるな……」
「いろはも履いてみる? あ、今年のクリスマスプレゼントにしよっか」
「え、え、いいの?」
「もちろん。本当はお菓子詰め合わせを考えていたんだけど……って、ネタバレしちゃった。でもでも、ほしいものをプレゼントっていうのもアリだよね」
「嬉しい! ありがとう、水琴」
「……いろは も、ありがとね」
「え?」
「ううん、なんでもない。5本指ソックス柄は乞うご期待で!」
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