4月18日　今日はどんな発明をしているのかな【今日のものがたり】

「それじゃあ、行ってきます」
「気をつけていってらっしゃい」
「はーい」

　わたしはバッグにパンがしっかり入っていることを確かめてお店を出る。
　ママとパパが作ったパンをお城へ届ける。それが今日のわたしの役目だ。二人が作ったパンはお城と契約をしていて、定期的にパンをお届けすることになっている。パパとママが忙しいときは娘のわたしがお城へ持っていくのだけど……

（今日もあの人いるんだろうなぁ）
　わたしはお城に憧れがあった。すごく大きくて広いお城。なかはどんなふうになっているのかすごく知りたかった。でも、まさか、あんな恐い人がいるなんて。

　ぶんぶんと頭をふって恐さを吹き飛ばす。わたしは毎日お城へ行くわけじゃないから、あの人がいついるのかはわからない。もしかしたら今日はいないかもしれないし、うん、楽しいこと考えながら向かおう。

　アーリンさん、またお店にパンを買いに来てくれないかなぁ。森で魔物からわたしを助けてくれた魔法使いさん。パパとママみたいなパンを作れる人になりたいなって考えていたけど、実はちょっぴり魔法使いに憧れ始めている。

　アーリンさんは今日も何かを作っているのかな。確か、魔道具っていったっけ。魔法の力を閉じこめたすごい道具。そんなとんでもないものを発明しちゃうアーリンさん。彼女だったら、お城のあの人と会っても恐いなんて思わないかな。もし、何かあったとしても、魔道具でなんとかしちゃったりするのかな。

　楽しいことを考えるはずがどうしてもあの人のことを思い浮かべてしまう。だめ、だめ。パパとママが作ってくれたおいしいパンをこの役目が終わったら食べよう。
　それは絶対に楽しいことだから……よし、今ならあの人に合っても平気かもしれない。お城まで走って行こう。