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【短編小説】さざ波

【利用規約(無料版)】2021/12/16 作成

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作者名:こはる
note:https://note.com/koharu20180909
Twitter:https://twitter.com/koHaru20180909

[本文]614文字

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短編小説『さざ波』

 よく、簡単に「その気持ちわかるよ」なんて言う人がいる。私としては、どの気持ちがわかっているというのか甚(はなは)だ疑問だ。人はそれぞれ違う。生まれも、育ちも、生き方も、感じ方も……。同じということなど何ひとつあり得ないのに、何を以(もっ)て「わかる」などと軽々しく口にできるのだろう。

 考えても仕方のないことを考える。この気持ちがわかるだろうか。わかると言われても、冒頭の思考に戻るのだけれど。
 なぜこんなことを考えているのかと言うと、海を見ているからだ。海を見て、人魚姫の物語を思い出した。私には、人魚姫の気持ちはわからないなと思ったのだ。
 私だったら。
 私だったら、迷わず王子の胸にナイフを突き立てるだろう。なぜなら、私は恋をしたことがないから。

 恋をしたと思っていた。恋しているのだと思っていた。失って気づく。私の想いは、恋ではなかった。
 では、あれは何だったのかと言われても、何とも答えられないのだけれど。
 私はあの人の胸にナイフを突き立てた。迷うことなく、ひと息に。

 私には、人魚姫の気持ちがわからない。きっと一生わからないだろう。
 たとえ愛していたとしても、愛する人を失うくらいなら、私はこの手で。

 寄せては返す波を見つめながら、取り留めのないことを考える。そろそろ行かなければ。ずっとここに居ては、何のために自らの手を汚したのかわからないではないか。
 寒さに震える手で、荷物を抱える。まだ私の人生は始まったばかりだ。

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370字

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