石のための掌篇小説◆アクアマリン◆
少年は、白いタンクトップに紺の短パン、
ビーチサンダルという出で立ちだった。
二泊三日の小旅行の最終日。
昨日は生憎の雨だった。
今朝から晴れて私は散歩に出た。
海辺のホテルを出る。空気は澄んでいた。
私は去年買った柄のワンピースに
今回の旅行に買った麦わら帽をかぶった。
防波堤から砂浜へ降りる。
ふいに私は砂の感触をたしかめたくなる。
私は裸足になった。そして砂浜を歩いた。
「壜(ボトル)を探しているのです」
浜辺で出会った少年は、私にそう告げた。
どうして壜を探しているのかと問うと、
「水が入っている」と少年はこたえた。
Aquamarine is from……
少年はつぶやいたあと、
波の音とともに消えた。
私はもう一度素足に砂の触感をたしかめた。
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