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ノーチェンジ


人は変わらない。

そういうことを彼はよく知っている。

よく知っているのにまた彼は人によって傷ついていた。


期待するだけ無駄だってのはさ、俺だってわかってるわけよ

何回も似たような事案が発生してるわけだしさ、わかってるんだよ

うん、とそれとなく相槌を打つ。

そして彼はまた、今まで何十回も聞いたことのあることを話し続ける。

アタシはそれをさも初めて聞いたかのように、うんうんと黙って話を聞く。

聞き続ける。

でもさ、何回言っても変わらないってのはさ何なんだろうな

あのやり方は駄目だって言っても変えないし、考え方だってずっと古いまま

新しいことをしろうともしないし、相手に寄り添おうともしない

そのくせこっちの気持ちも考えろってさ……

ふざけんなよまじで、その言葉のあとに小さく舌打ちが入る。

そして彼はテーブルに突っ伏してしまう。

きっと酔いが回ってきているのだろう。

アタシは彼の背中をさする。

できればこのまま静かに眠ってくれないかな、なんて思いつつゆっくりと背中をさすり続ける。

彼には彼の考えがあるのだろうが、彼と関わっている人達にもその人達なりの考えがある。

彼もそれについては理解しているとは思うが、それにしたって彼の期待はいつも裏切られその度に彼はここに来る。

来て愚痴る、それだけ。

そんなに人間関係でウジウジして仕事にも支障がでるのだったら、さっさとそんな会社から離れてしまえばいいのに、とアタシは思う。

でも彼はそんなことは絶対しないし、これから先も今の会社を離れたりしないだろう。

そういう彼も彼で変わろうとしないところは同じのだということに彼は気がついているのだろうか。

きっと気がついていないんだろうな、と軽く息を吐く。

彼の背中をさするのを止めてみると、規則正しく彼の体は上下していた。

……寝たか

どっと押し寄せてくる疲れを振り払うように立ち上がり、しまってあったブランケットを取って戻る。

彼の背中にそっとかけて、離れる時にもう一度だけ背中をさする。

彼から離れて寝室に行き、アタシはぐったりとベッドに沈み込む。

こんな不毛な時間をこれからも続けることになるのに多少うんざりとして目を閉じる。

アタシは程なく眠りについて、明日になればきっと何事もなかったかのように彼と何かを話すのだろう。

そうやって変わらない生活を続ける。

アタシも彼も、変わらない人なのだ。

彼がそれに気がついたとき、アタシたちの関係は変わるのだろうかと考える。



考えるけれど答えは出ないまま、アタシは眠ってしまったのだった。








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