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404事務所


存在しているのに存在していないもの、なーんだ


蝙蝠のようにペンダントライトの上にぶら下がっている彼女から、そんな問いが降ってきた。

声は笑っている。

愉快そうだが、きっとこの問いの答えは愉快なものではないということを彼は知っている。

彼女は答えが返ってくる前にペンダントライトから飛び降りて、彼の前に座る。

彼は目の前に座った彼女を邪魔者を見るように睨みつけていた。

あの……

控えめな声が彼の耳に届き、彼はそちらへ顔を向ける。

あぁ、すみません

こいつ人を不愉快にさせるのが趣味なので、気にしないでください

あ、はい……

依頼人であるネオテニーの少年にそう言うと、彼は彼女をシッシと手でどこかへ行くようにと合図する。

それでも彼女は頑なにそこから動かず、彼とネオテニーの少年にもう一度同じことを問う。

存在しているのに存在していないもの、なーんだ

お前、こっちが答えるまで消えないつもりか?

そりゃーまあ、そうよね~

きゃははと笑い声。

不愉快を隠そうともせず彼はため息を吐く。

そして彼が口を閉じて黙っていると、ネオテニーの少年が口を開いた。

それは……、ぼくたち、のことですか?

ぶぶー、ふせいかーい

ネオテニーなんて単純な答えじゃないよ~

とても愉快そうな高音の笑い声。

それが癇に障ったのか、いい加減にしろと言って彼は彼女を目の前から手で横にずらしてテーブルから落とす。

不服そうな声と羽が開く音。

彼女はパタパタと空中をゆったり飛び、少年の肩に降りた。

ねー、ねー、キミさ

ネオテニーだけが世界から認められていないと思ってるの?

だとしたらキミってすごくのーてんきなんだね~

お前、いい加減に

あの、ぼくは大丈夫ですので……

それより、と少年は続ける。

リトルデビル……本当に存在したんですね

彼も彼女もその言葉にああと似たような反応を示した。

まー、数は少ないから都市伝説的な存在ではあるよね

でもちゃんと存在はしている

君と同じだ

彼はさらりと言うが、それでもネオテニーもリトルデビルも世の中からは存在しないものとして扱われている。

もちろん、ネオテニーやリトルデビルに関わらず他にも存在しないものとして扱われるものたちは沢山いる

普通とされている基準から外れすぎたものたちは、存在しないとされてしまう

俺はそういうのは間違っていると思っている

だからこの事務所を作った

彼はそう言い切ると、ネオテニーの少年に訊ねる。

それじゃあ、そろそろ聞かせてくれないか

君は何を頼みにここに来たのか


彼女はネオテニーの少年の肩から飛び立ち、またペンダントライトの上に戻っていった。






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