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白フードの夢
目の前で白いフードを被った人物が妙なことを話す。
例えば、夜の色を誰かが塗り替えたとしよう
それに彼等が気がつくとして、どれくらい先になるだろうか
その人物は笑みを浮かべている。
そして続く言葉を口にしようとした。
僕は身体の異常な熱さを感じて身じろぎ、ぱちりと目を開く。
こめかみに汗がたまっているのか、その付近の髪の毛が濡れている。
枕元に置いている携帯を左手で探して電源を入れると、時刻はまだ午前二時を過ぎた頃だった。
変な時間に目を覚ましてしまったな、と思いつつ半身を起こす。
身体が異常に熱く、シャツをぱたつかせて冷やそうとするも効果はない。
トイレに行くついでに少し起きて水か何か冷たいものを口にしよう、そう考えてベッドから降りる。
用を足し、冷蔵庫の前に行く。
足の裏はフローリングの冷たさを感じているのに、全く身体は冷えていかない。
長く息を吐いてから冷蔵庫を開け、水の入ったペットボトルを取り出す。
ひんやりとして心地いい。
少しの間、僕は額にペットボトルを当ててその冷たさを感じていた。
一口飲んだ時、ふと先程まで見ていた妙な夢のことを思い出す。
白いフードと変な問い。
問いというよりはたとえ話?
何て言ってたっけ……
夜の色がどうこうと言っていたような気がするが、夢には既に霧がかかってしまったようで上手く思い出すことができない。
ペットボトルを右手に持ったまま、ふらふらとリビングの窓に近寄る。
遮光性のあるカーテンを片側だけあけて、そのまま窓も開く。
網戸を通して涼しい風が室内に入ってくる。
身体の熱が下がっていくのを感じながら外を眺める。
深い紺色……白と橙の街灯
空には星々、か
いつもと変わりのない夜、深夜の光景。
夜の色を塗り替える……?
夢で白いフードの人物が言っていたことを思い出す。
夜の色を塗り替えたとして、それに気がつくのはどれくらいかかるのか……そんなことを言っていた。
もう一度、今度は注意深く外を眺める。
……や、これが夜だろう
一瞬過った考えを振り払うように左右に頭を振る。
窓を閉めて、カーテンも元通りにする。
水にもう一度口をつけて、冷蔵庫に戻す。
まだ起きるには早すぎるので、眠るためにベッドに向かう。
廊下を歩きながら考える。
もし、今の深い紺色が塗り替えた後の夜の色だったとしたら、と。
ありえない、か……
自分で言っておいて、鼻で笑う。
そのままベッドに潜り込む。
程なく眠りについたけれど、白いフードの人物はもう夢には出て来なかった。