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ライア
私はこんなところにいるべき人間ではないはずだ。
そんな思いがここ数年、私の中にゆっくりとでも確実に蓄積されていた。
気が付いたらその思いは、もうすぐ破裂しそうな風船のようになっている。
どうしてこんなになるまで放っておいたのだろう。
まだ小さなうちなら難なく消し去ることが出来たというのに。
ここまで膨らんでしまったものは、どう手を施しても私自身も周りも無傷では済まないだろう。
八つ当たり、周りはそう思うのかもしれない。
でも私からしてみればこれは、八つ当たりなんかじゃない。
これまで不当な扱いを受けてきたのだ、最後くらいやり返したっていいじゃないか。
どこかの高尚なお人は、やり返したらダメだとか、同じ位に落ちるとか、そんなことしても意味はないとか言うだろう。
でも残念ながら私は高尚な人物ではない。
だからやり返す。
奪われてばかりはごめんだ。
こちらの善意に付け込んで、それを当然と思い異常な要求を繰り返す。
そのわりに自らが何かを差し出すことはなく、搾取し続ける。
どうしてさっさと逃げ出さなかったのか、それは私にもよくわからない。
というよりも搾取する側が上手かった。
きっとただそれだけのことなのだろう。
というより、それに尽きるのかもしれない。
彼等は一種の洗脳のプロと言えるのかもしれない。
逃げ出そうとするとあれこれ難癖をつけ、こちらの心が痛むようなことを言い、繋ぎとめる。
そしてぬかるみにはまったようにそこから抜け出せなくなる。
逃げ出せなくなる。
そこから脱出するためにはこちらの足をそぎ落とすか、ぬかるみ自体を爆破させて消し去るかの二択だ。
……いや、本当はもっと違う穏便なやり方があるのだろうけれど、私には無理だ。
私はもう穏便に対応することは、検討していない。
むしろ爆破一択だ。
こちらがこれまで受けていた分をぶちまけて、私はここを去るのだ。
今までずっと、私をこんなところに繋ぎ止めたことを後悔するくらいにはぶちまけるつもりだ。
なぜそんなことをするのか?
それは単純明快である。
私はこんなところにいるべき人間ではないのだから。