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ぷかぷか


ぷかぷかと球体が浮かんでいる。


ぷかぷか、ぷかぷか。


でもぷかぷかだとその周りは水かなにかの液体で満たされていなければならない。


液体のないところに浮かぶと、それはぷかぷかではなくぽわぽわだと思う。


ほわほわ、ふわふわ、かもしれない。


でも今、ぼくの目の前には液体で満たされているわけでもないのにぷかぷかと球体が浮かんでいる。


おかしなことだ。


これはおかしなことだ。


あってはならない。


世界の法則に反することだ。


誰かがあの球体に近づいて、いや、作り出した人物に会って正さなければ。


ぷかぷかからふわふわに変えてもらわなければならない。


もし変えるのを拒んだら、あの球体のために世界をひっくり返すことになるだろう。


でも誰があんな球体を作ったのか。


ぼくは誰に会いに行けばいいのだろう。


そもそもぼくがいまいる場所ってどこなのだろう。


真上にぷかぷか浮いている球体が、嫌に目につく。


ふわふわだったらこんなに心がざわざわすることはなかったのに。


じっと何も考えずに見つめ続ける。

そうしていたやっぱり、ふつふつと法則に反する物を作った人物に会わなければという思いが沸き上がる。


ここから動いて会いに行かなければ。


会って法則通りに球体を作らせなければ。


世界の中に球体を戻さなければ。


誰に会いに行けばいいのかもわからないのに、ぼくはふらふらと歩き出した。


とはいってもここには道という道はなく、歩くのだってもわもわとしていて思うように進めない。


もわもわ、もわもわ。


進んではいるけれど、誰かと会うまでどのくらい時間がかかるのだろう。


そもそもぼくはどれくらい前から、生きていてあの場所にいたのだろう。


わからない。


記憶がぼんやりとしている。


しかし、わからないということは、ぼくは知らなくていいことなのかもしれない。


わからないままでもいいかと思い、なかなか進まないので歩みを止める。


上を見上げると、まだ球体はぷかぷかと浮かんでいた。







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