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世紀末の夕暮れ
1999年。
夏。
某所。
少年達は残り少ない夏休みを満喫していた。
その中の一人に平凡な少年がいた。
彼は今年の世間になじめずに夏休みを淡々と過ごしている一人だった。
今年はある有名な予言者が夏に世界が滅びると言っている年で、大人も子供も皆どこか落ち着きのない異様な雰囲気で彼はそれをどこか気持ち悪く感じていたのだった。
世界が終わるなんて、ぜったいウソなのにどうしてみんなあんなに熱中してるのかなぁ
え?
それお前本気で言ってんの?
終わるって!
夏で世界は終わるって絶対!
予言信じてないとか、お前信じらんないわ!
え?
本当に信じてないわけじゃないよな?
な?
な?
早口でまくし立てるように彼にそう言ったその子は彼と家が近く、小学校に入る前から仲の良い友達である。
ただ、その子は彼と違って終わりの予言を信じている側の一人だった。
彼としてはどうして両親や学校の先生、友達、その子までもが予言を信じているのか理解が出来ずにいた。
君はどうして予言を信じてるの?
え?
だって、みんながそう言ってるし信じてるから
みんなが言ってると信じることになるの?
という言葉が口から出そうになったが、これはケンカの種になりそうだと思って彼は言うのを止めた。
お前も本当は信じてんだろ?
ううん……、どうだろ
わかんないや
まー、信じなくてもいいってか、終わるんだけどな
いや、それでもお前やっぱそれ、信じてないってことは、あれだな
あんま言わない方がいいかもな
ほら、クラスのあのリーダー格の二人には特に言わない方がいいと思うぜ
そうだね、と彼は言った。
確かにあの二人は特に世界が終わると信じ込んでいるので、否定なんてしたらきっと彼は世界が終わる前に世界からいなくなってしまうかもしれない。
でも、と彼は思う。
どうしてみんな、そんなに世界が終わってほしいのだろうかと。
世界が終わってしまったら、こうやって夏休みをその子や他のみんなと遊ぶことだってできなくなるっていうのに。
そんなふうに思いながら、彼はその子と今日も夕暮れまで一緒に遊んだ。
なあ予言の通りさ夏で世界が終わったらお前どうすんの?
そうだな……どうしようかな
なんだよそれ、答えになってないぜ
あ
何だよ
ゲーム……
は?
借りてたゲーム、返せなくなっちゃうから困るかな
真っ赤な夕日を見ながら、彼はそう呟いた。