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予知夢の再現性

あたしは昔からよく夢を見る。

そしてそれは、いつも同じ夢だ。

あたしの手の中に光る球体があって、それをたくさんの人々が狙っている。

狙っているけれど人々は近づいて来ない。

近づいたら死んでしまうとわかっているからだ。

あたしの持っている球体は、恐らく爆弾なのだろう。

無理矢理引き離すと爆発してしまう。

だから人々は、あたしに近づかない。

ところで、この夢の終わり方はいくつかある。

ひとつめは、あたしが球体を落としてしまい爆発して目が覚める。

ふたつめは、痺れを切らした人々の内の一人が無理やり球体を奪って爆発。

みっつめは、どこかの教祖様のような長い服を着ている人があたしから球体を安全に引き取る。

球体は爆発しないけれど渡したことによって、あたしは近くにいた人々に殴られ蹴られ等々散々な目に遭って目が覚める。

よっつめは、教祖風の人に球体を渡さないでいると軍人が数名やって来て、あたしを施設に連れていく。

あたしは球体を持ったままそこで幽閉生活をすることになるのだが、何者に施設が襲撃されてその時に球体を落としてしまい爆発。

いつつめは、襲撃された時に爆発はせず、球体ごとあたしは別の施設に連行される。

しかしその後、また施設は襲撃され……同じことが何回も繰り返されるのだ。

あたしの目が覚めるのは、球体が爆発するか他の要因であたしが死んでしまうかのどちらかだった。

一度だけ爆発も死も免れて目を覚ましたことがあったと思うけれど、正直どうでもよかった。

それよりもなぜこんな夢を幼少期から何十回以上も見続けているのか。

家族や友人に話しても笑っているだけで誰ひとりとして真剣に取り合ってはくれなくて、あたしはずっと苦い思いを抱え続けていた。

そもそもあの光る球体がなんなのか、あたしはわからないしあまり知りたいとも思えない。

とりあえず爆発する不審物で、それを手にしているせいであたしに死が訪れる。

なんでそんな物を手にしているのかもわからない。

ただ確かなことは、目を覚ますためにはあたしが死なないといけない不吉な夢である、ということだ。



あたしが生まれてから二十七年。

そろそろこの悪夢も終わってくれないだろうかと思うのだが、悪夢は終わるどころか悪夢が現実のものとして始まろうとしていた。

今、あたしの周囲にはあの夢と同じように人々がいる。

そして手の中には、光る球体がある。

その正体は、手のひらサイズの原子力爆弾。

あたしはこれをある人物から渡されて、数年前に建設された新しい創造主を祭る神殿に持って行けと命令されたのだった。

あたしはもちろん、その人物に訊いた。

どうしてあたしなのか教えてください、と。

その人物は言った。

それは神殿に着けばわかるから行きなさいと。

それだけ言うとその人物は煙のように消えてしまった。

あたしは神殿に行くしかなくなってしまい、しぶしぶ向かっていたのだがその途中で変な人々や明らかに危ない人々に追われた。

そして現在、その人々+αに取り囲まれている。

あの悪夢と同じである。

取り囲むだけで近づいて来ない。

でも後二分この状態が続いてしまうと、あの中から痺れを切らして向かってくる者が出るだろう。

さて、この場をどう切り抜けようかと考える。

あたしは、あの悪夢を思い出しながら最善でかつ最短のルートを頭の中で組み立てていた。




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