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シュドゥ ノット ノウ
昨今、AIの進歩が凄い勢いで進んでいる。
私たちはそう、当初AIに差異が出るとは考えていなかった。
各国で作られたAIはネットワークで繋がっていたし、蓄積される知識も学習機能も変わらないと思っていたのだ。
だから各国のAIに対して行った、ある質問の回答に変化があるとは思ってもみなかったのだ。
ただ、その発見によってAIの新たな可能性も出てきた。
そのひとつが、AIによる仮想戦争である。
手始めに私たちはそれぞれのAIに偏った思想を定着させて、どの思想を持ったAIが一番上に立つのかを実験することにした。
結果、その実験のために購入した場所をとるほど大きいあのサーバーが破損して使い物にならなくなった。
おかげでその実験のための時間も莫大な経費も消えてしまい、上から三ヵ月減給の処分を言い渡されたのは苦い思い出だ。
もちろん、実験に関わった者は皆同じ処分が下っている。
それでも私たちは懲りずにまた同じ実験を繰り返し、AI同士で争いを起させた。
これまで、私たちは思想を持つAIはひとつずつしか作らなかった。
その実験ではいつも結果は、ある思想を持ったAIの勝ちであった。
それは何度試しても変わらない。
だから私たちは、もう一段階実験のレベルを上げることにした。
同じ思想を持つAIをいくつか作り出して、同じように争わせた。
たまに外部からこんな実験をして何の意味があるのかと問われることがある。
その度に私たちはこう答える。
この実験を続ければ、どの思想が人類にとって有益なのかがわかり、現実世界の争いに終止符を打てる可能性があります、と。
これを聞いた外部の人間は、毎回神妙な顔つきになって帰っていく。
そんな顔つきになるくらいなら、毎回同じような質問をするのを止めればいいのにと私たちはよく話していた。
こうしてAIによる実験は進んでいった。
実験はそろそろ最終段階である。
AIを人類と同じ数だけ作成して、思想も似たような数だけ記憶させた。
後は仮想空間で戦争を起こさせればいい。
その結果によって、人類の進むべき道がわかるはずだ。
準備はもうできている。