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夏は終わった
明るい昼間におんぼろの屋敷になぜいるのかと問われれば、小一時間前にあった出来事を話さなければならない。
いつもの公園に仲の良い三人が集まっていた。
秋が始まりかけているけれど、まだまだ太陽が出ている昼間は蒸し暑さが残っていた。
とくに何をするわけでもないのに、学校終わりや休日に約束もせずこうして公園に集まるのは不思議なことだと思う。
大人たちには当事者の僕たちよりも、この集まる現象がもっと不思議に見えているのかもしれない。
僕たちも大人になればきっとわかるのだろうけど、それはずっとずっと先の話だ。
今日も集まった三人で、ブランコの区画を陣取って内容のない話をしていた。
なんか来週またテストあるよねー
え、ほんと、知らなかった!
先生言ってたじゃん、聞いてなかったのか?
いやあ……ほら、一応クラス違うじゃん?
……
……
僕と彼女の冷たい視線をあびて、あいつは短くごめんと言う。
そんなわかりやすい嘘を吐いたあいつから、ある提案を受けた。
なあ、おんぼろ屋敷にこれから行かないか!
なんだよ、急に……
え、いいね!
乗り気じゃない僕とは反対に彼女はウキウキとして提案にのる。
待てよ、なんでおんぼろ屋敷に行こうなんて思ったんだ?
あそこ悪い幽霊がいるって噂じゃん、と付け足すとだからさと勢いよく答えが返ってきた。
だってさ、今年は夏祭りもなければ夏っぽいこともなーんにもしてないじゃん?
だったらほら、夏が終わる前に幽霊い会っておこうってわけさ!
なるほどー、いいね!
全然良くないし、もう夏は終わっていると言いかけたが、僕が言葉を発する前に二人はおんぼろ屋敷の方向へと走って行った。
一瞬二人のことは放っておこうかと思ったけれど、あの二人だけで行動させると問題しか起こさないことを思い出し、しぶしぶ後を追う。
それが小一時間前の出来事だ。
そして現在、僕たち三人はおんぼろ屋敷の前に居る。
……本当に入るわけ?
そりゃ、ここまで来たんだし……
住居不法侵入、僕たちは警察に捕まることになるのか
いやなこと言わないでよー!
不吉だぞ!
居間から入るおんぼろ屋敷のほうが不吉だよ、と心の中で反論する。
二人は僕をキッと睨みつけると、若干震えているようにも見えるその足でおんぼろ屋敷の中へと向かっていく。
本当に行くのか……と心の中で呆れつつ、二人の少し後ろからついて行く。
二人がおんぼろ屋敷の中に入ったのを確認して、そっと後ろを振り向く。
そこには恐らく、あの二人が見たいであろうモノが無表情でこちらを見ている姿があった。