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ウェイ アウト ゼア

俺は今、捕まっている。

お前は外に出ると碌なことしないから、この部屋に一生閉じこもっていろ。

そう言い捨てられ、ここに投げ込まれた。

部屋の隅にぼんやりとした明かりがあるが、それだけでわかるのはせいぜい部屋の大きさぐらいだ。

窓はなく、机も、ベッドもない。

薄っぺらいマットレスとタオルケットはあるようだったが、暗すぎて本当にマットレスなのかすら怪しい。

コイルの入った分厚いマットレス、触り心地が良くて軽い羽根布団が恋しい。

日に何度か食事が運ばれてくるが、味は薄くて不味いし俺の嫌いな食べ物ばかりだった。

しかし、そうは言っても腹は減るので仕方なく出されたものは食べている。



俺はどのくらいここにいるかは正直いって覚えていない。

だが、ずっと長い間閉じ込められている。

時間はあるので、なぜ閉じ込められることになったのかを考えていた。

俺は確かに碌なことをしてきた覚えはない。

なにせ、人生は安定したほうがいいと考えているあいつの考えを木っ端みじんにしてきたのだから。

安定しそうになる度に、それをぶち壊して新しいことを選ぶように示してきた。

その度にあいつは安定から遠ざかるが、たった数年であいつの人生はまた安定しそうになる。

何故あいつは困難をふっかけても器用に全て上手くやってのけるのか。

安定へと戻っていくのか。

全く持って腹立たしい。

あいつに安定なんてものは必要ないし、あいつだってそれを望んでいる。

だから俺はいつもあいつを安定から引きずり出してやっているというのに、それの何がいけないというのだろう。

確かに、はたから見ると碌でもないことなのだろう。

しかし、俺にはわからない。

あいつが心の底で無意識にだとしても安定など望んでいないというのに、それを制御して安定へと持っていこうとすることが正しいことなのか。

そう、わからないからこそ俺はあいつを蹴り飛ばして安定から遠ざけてやっているのだ。



さて。

あいつもそろそろ安定に飽きてきた頃だろう。

この部屋の抜け道はどこだ?

まあ、抜け道がないならこっちで勝手に作ってしまえばいいか。

俺は閉じ込められているこの部屋。

【思考回路】に抜け道を作るための準備に取り掛かった。



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