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一律
子供頃、なぜ正月にお年玉を。
つまりお金を貰えるのかよくわかっていなかった。
よくわかっていないけれど貰えるものは喜んでもらっていた。
貰ったお年玉を何に使ったのか、それもやっぱり思い出せない。
そういうものなのだろうけど、人からお金を貰っておいてちょっと薄情だな、と大人になった今では思う。
そして今の自分は、もう渡す側になってしまったわけで。
姉の子供たちにいくら包めばいいのか、ポチ袋三つの前で小一時間悩んでいる。
一番下はまだ小学生にもなっていない。
真ん中は小学生で、たしか三、四年ほどだったと記憶している。
一番上は中学生だったはずだ。
順当にいくと上から五千、三千、千くらいでいいかなと思うのだが、ちょっとひっかかることがある。
年齢によって金額を変えるべきなのか、と。
お年玉まで年功序列でいいのか、と。
それに恐らく真ん中の子が何か金額について文句を言い出すだろう。
そんな未来が簡単に思い描くことができる。
新年早々あの子供たちの喧嘩を目の当たりにすると思うだけで疲れてくる。
流石に面倒だ。
新年早々厄介ごとを持ち込むのも、巻き込まれるのもごめんだ。
それなら、と意気込んでポチ袋にお金を包んだ。
あけましておめでとう、今年もよろしくー
軽く挨拶を済ませて三人の子供たちにポチ袋を渡していく。
ありがとうおじさん!
と元気な声を出して一番上と真ん中の子が部屋の隅に行き、中身を一緒に確認している。
我関せずで、温かいお茶を啜る。
隅の方で、あれ、いっしょだ……という言葉が聞こえてくる。
まあ、うんそうなるよねと心の中で返事をしておく。
今回、お年玉の金額は一律三千円にした。
年齢によって金額が変わるのは変だし、かといって渡さないのはもっと駄目だと思い三千円を包んだのだ。
そして包んだ後、なんかもう今後はずっと三千円でいいかなと思った。
姉の子供たちとそこまで深く交流があるわけではないし、この先交流が増えるわけでもない。
ただの親戚、というだけで毎年お年玉を渡すのもよくよく考えると変だろう。
ということでもうおじさんは、君たちには毎年三千円をお渡しいたします。
あとは両親から毎月お小遣いを貰いたまえ。
と心の中で言っていたのだが、部屋の隅に居たはずの二人が私の左右に立って何かぎゃーぎゃーと喚いているではないか。
何も聞こえないふりをして目を閉じて、また開ける。
もちろん状況は何も変わらず、何も答えない私に向かってぎゃーぎゃーと喚く子供が二人。
この光景は、私が帰宅する時までずっと続いた。