レモン味にした
家の中だというのに、ひどく暑い午後だった。
クーラーはちゃんと稼働しているのにもかかわらず、どうしてこんなに暑いのだろう。
自分が暑がりだなんて思ったことはないけれど、ちょっと考えてしまうくらいの暑さだ。
ジッとしているだけで汗が額から落ちてくる。
サウナじゃないんだからさ……
ソファにぐったりと背を預ける。
布製のソファじゃないからか、シャツから出ている腕がぺっとりと張り付いてしまう。
その感覚にうんざりしながらも、とてもソファから動く気になれない。
ああ、やだなあ……外とか行きたくないしさー
もっと温度下げようかな
姿勢はそのままに顔だけ動かしてリモコンの位置を探る。
しかし見えるところにはないようだ。
本当に動くのが嫌すぎて、全てがどうでもよくなってきたときに電話が鳴った。
しぶしぶ体を起こしてテーブルに置いている携帯を手に取って、ディスプレイを確認するとあの子の名前が表示されていた。
ちょっと迷ってから出ると、テンションが高めの声が私に向かってきた。
やっほー、何してた?
暇してた?
暇してるよね?
今さ、メインストリートにいるんだけど出て来れない?
出て来れるよね?
出てきてよ
昨日オープンした、かき氷屋行こうよ
行くよね?
行くしかないっしょ!
来るしかないっしょ!
メインストリート!
今から三十分以内でよろしく!
プツ。
……なに、いまの
頭が全然追いついていないのだけど、言いたいことだけを言って電話を切ったということは理解出来た。
メインストリートに三十分以内に来いって言い捨ててた気がするけれど、今から急いでも三十分以内に着くのは無理だろう。
あの子の言葉を完全に無視して、このまま家に引きこもっているほうがいいような気がする。
そもそも外行きたくないし……ほっとこ
そう決断をして、ソファに寝っ転がる。
また皮膚がぺっとりとくっつく。
この感覚は好きではないけれど、外に行くよりましだと思えば気にならない程度にはなる。
あー……あつい
目を閉じてゆっくりと呼吸をする。
ちょっとだけ眠気がおそってきたけれど、それは呼び鈴の音でかき消されてしまった。
もう、誰さ……
玄関を開けると、あの子が空と同じくらいの明るさで笑って立っていた。
迎えに来たよ!
さ、かき氷食べに行こ!
玄関から気持ちの良い風が私を通り過ぎて、部屋の中に入っていった。