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空間の種|The Lot Radio

「空間の種」シリーズは「建築×〇〇」をサブテーマに、新しい空間の成り立ち方の事例や、これから生まれてきそうなプログラム、一般化しそうな価値観や技術など、新しい建築デザインに繋がりそうなトピックを、気が向いた時に更新するnote。

今回は「The Lot Radio」について。
サブテーマは「建築×オンラインコミュニティ」

「The Lot Radio」って?

「The Lot Radio」は、毎日入れ替わりでDJが音楽を放送している音楽ファンの為のコミュニティラジオです。特徴的なのは、リスナーが滞在することができる物理的な場所を持っていること。

ニューヨークの低層住宅街にある空地が「The Lot Radio」の拠点で、設置されたコンテナからラジオは放送されており、周囲の空地にはベンチやパラソルが並び、コーヒーやビールが提供されています。

リスナーは、インターネットを通して音楽を楽しんでもいいし、気が向いたら現地でアルコールを入れつつ、リスナー同士交流をしながら、音楽を楽しむこともできる。その時の気分に合わせて、音楽を聞くことが可能です。wiredの記事に概要がまとまっています。

「The Lot Radio」から考える
地縁に依存しないコミュニティの可能性

建築や都市の視点で「The Lot Radio」に可能性を感じた点は、「地縁以外の人の縁で、リアルに常設の空間を実現している」ことです。しかも、その空間は、会員制で閉じていたり商業的な場ではなく、誰もがフラット立ち寄ることができる極めてオープンな性質を持っています。

これが実現する仕組みとして、ラジオを通したオンラインコミュニティが存在います。「The Lot Radio」はオープン後1年程で赤字を脱出しているそうですが、おそらく、オンライン上のコミュニティがなければ、黒字化することができない、もしくは、相当の時間がかかっていた。場合によっては、継続することが困難な状況になっていたんじゃないかなと想像します。都市の中に場所をつくる為に、オンラインについて考えることの重要度がましているのかもしれません。

都市空間は、経済の力によってどうしても商業色が強くなったり、地域毎に同じものがまとまったりしてしまいがちですが、「The Lot Radio」のような土地に縛られない形でできてくるコミュニティや空間が、思わぬ形の出会いを作ったり、都市空間にバリエーションをもたらすことで、都市が豊かになるきっかけになるのではないかと密かに期待しています。

スマホのある生活が一般化し、デジタルとリアルの境目が溶け始めている現代において「オンラインコミュニティでもあり、オフラインコミュニティでもある」このような場所はきっと増えるでしょう。オンラインコミュニティとオフラインコミュニティの違いを比較したり、オンラインとの関係を踏まえた上であるべき場の姿を模索することは、空間の新たな価値を考える貴重な種だと思っています。

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宮下巧大
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