AI設計論|超並列プロセス論
AIによって切り開かれる空間デザインの可能性について考えるノート。2回目の切り口は"幅"。「不可逆性の高いデザインでも、並列の思考の重要性が増すんじゃないか?」という話し。
不可逆性の高さから生じる線形思考
他のデザインと比べて建築デザインが持つ特徴の1つが不可逆性の高さだと思います。多くの場合、スケッチのような抽象的な検討から徐々に具体化に積み上げていくデザインプロセスを踏むのは、この不可逆性に起因している気がします。藤村龍至先生の「線形プロセス論」はこの思考を体系化したものです。
この線形の思考にAIが影響を及ぼすかもしれない。というのが今回の話し。
AIがもたらすバリエーションの多さ
多くの画像生成線AIには「リピート機能」と「バリエーション機能」が備わっています。それぞれ簡単に説明します。
リピート機能は、画像生成AIに「100枚画像を生成して」と指示を送ることで一瞬で大量の画像を生成できる機能のこと。出力される画像は少しずつ異なるので、この機能を利用し、仕上げパターンやディテール検討のバリエーション出しが可能になります。
バリエーション機能とは、「インテリアのデザインを考えています。"青のパターン"と"赤のパターン"と"緑のパターン"をそれぞれ出力してください」と指示を送ると、それぞれの画像を出力してくれる機能のこと。想像している可能性を全て出力することができるので、頭の中でアイデアさえ思い浮かべば即自に可視化することが可能になります。
この2つの機能はデザインの検討に幅をもたらす便利機能なのですが、実は線的思考と相性が悪い側面もあり、扱い方に工夫が必要だったりします。
AIの特性に翻弄される線的思考
例を通して考えます。画像生成でを理想に近いビジュアルができたとします。ここから成度を上げようとする際、線形プロセスだと、画像の部分修正繰り返すわけですが、実はこれだと効率が悪くなることがある。
AIの特性を活かすのであれば、元のプロンプトを微調整し、前述の"大量生成機能"や"バリエーション機能"を利用して、新たに画像を再出力することで、理想に近い画像を"素早く"出力することができます。
この例のように、途中まで出来上がったデザインに対し、「さらに手を加えていこう」はなく「この方向性で新たに100案つくろう」と考える思考は、線形の思考からは少し距離のある思考です。
無数の案を並列で走らせ、アウトプットされたものの中から良し悪しを見極める。これを繰り返すことで、広大な可能性からデザインを徐々に絞っていくプロセスが可能になります。これを"超並列プロセス"と呼んでいます。
"超並列プロセス"
"超並列プロセス"はロゴやコピーライティングのようにスピードの求められるデザインでおこなう思考に非常に近いです。画像生成を建築デザインに取り入んでいくには、これまで馴染んだ手法や思考に捉われず、新たな思考を身につけることが必要なのかもしれません。
早くて多い情報を扱うのは建築デザインにとって難しい領域ですが、だからこそ、この壁を乗り越えが建築デザインの発展につながり、その先にAIネイティブのデザインが生まれるのかもしれない。と少し期待をしています。
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