AI設計論|喋る画像と集団芸
AIによって切り開かれる空間デザインの可能性について考えるノート。4回目の切り口は"意味"。「生成画像の特徴は集団デザインの在り方も変わるんじゃないか?」という話し。
分散型クリエイティブの難しさ
分散型で働くことが一般的になり、個人の働き方の自由度が増した一方で、共同作業の難易度は上がったと思います。特に、感覚的な共有が必要なクリエイティブ業界では、難易度の高い課題で、どう向き合っていくか個人的な興味があります。それについて考えます。
生成画像は喋る画像
さて、AIの話しです。これまでに何千何万と画像を生成してみるなかで、生成画像とスケッチやドローイングなどの画像では何が違うかと考えたことがあります。その1つが意味です。
画像の生成は、「ストライプなオフィス」「オバケのような白模型」「玉ねぎみたいな照明」「木版画のようなパース」表現したい内容を指示で出力を行います。
したがって。AIで生成した画像には必ず指示文(=プロンプト)があります。この画像と言葉がセットで存在する特徴を”喋る画像”と呼んでいます。
非同期コミュニケーション
喋る画像によって起きる変化を1枚の画像を通して考えます。
質問です。上記の画像に込められたデザインの意図はなんでしょう?汲み取れますか?これヒント無しで想像するのは難しいと思います。
では、ヒントです。この画像は「職人の工房のようなテイストのクリエティブな発想が生まれるオフィス」というプロンプトで生成されました。だとどうでしょう。
グッとデザインの意図を読み取りやすくなると思います。例えばプロンプトが「サステナブルなリユース素材を利用したオフィス」であれば、別の意図を感じるのではないでしょうか。
このように、生成画像はセットになるプロンプトのおかげで意味の伝達がしやすい質をもっているのです。ゆえに”喋る画像”なのです。
集団芸の時代
上記の特性を活かし、最近は画像生成AIの出力ページを協働するデザイナー間で共有してデザインをするようになりました。これが非常に効果的。
同じプロンプトで繰り返し出力している回数をみれば、何を気に入っているのかを直感的に理解できるし、画像の部分修正をしていれば、調整したい箇所が具体的に可視化されます。選ばれなかった画像も全て残されていることで、成果物の背景にある興味や方向性も把握できます。
加えて、ツッコミのしやすさという副次的な利点も生まれました。AIという第三者で的な存在があるおかげで、他のメンバーの案に新たな提案を加えたり、上書きする際の心理的ハードルが大きく下がります。AIがコミュニケーションの仲介役となることで、コラボレーションが柔軟かつ自然に進む環境が生まれつつあると感じています。
集団芸の時代
複数人の発想をシンクロできることはクリエイティブにとって大きな可能性です。音楽業界では、作詞作曲を複数人でおこなう”コライティング”スタイルが広がったことで、これまでとは違う質の音楽が生まれましたが、建築デザインも同様に、集団芸化を進めた先に新しい質の空間の誕生があるかもしれません。そんな未来に期待しています。
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