映画「犬鳴村」の設定を考察 追記あり
まだ一度しか観賞出来てないので後日DVDが発売されたら検証します。
ほぼ二次創作のような補正入りの考察であることは断っておきます。
※パンフレットが未入手なので人物についての考察が間違っているかも知れません
【登場人物】
父 :森田晃
母 :森田綾乃
兄 :森田悠真
妹 :森田奏
弟 :森田康太
母方の祖父:中村隼人
兄の彼女:西田明菜
奏の曽祖父:成宮健司
奏の曽祖母:籠井摩耶
奏の患者の少年:笹本旭
まず犬鳴村について。
手塚治虫さんの作品「バンパイヤ」の主人公トッペイの夜泣き一族の故郷と同じような異形の者の隠れ里と思われます。
夜泣き一族は満月になると狼に変身する獣人の一族ですが、犬鳴村の一族は獣人化に加えて霊的能力の発現があるようです。
しかし、その力は一族全てに現れるわけではなく、映画では奏とその祖母、奏の患者の笹本旭にしか見られません。
※奏の母:綾乃には獣人化の兆しはありますが外見の変化はありません。
もしかすると籠井の血筋は犬鳴村の中でも特別な家柄だったのかも。
奏の曽祖父にあたる成宮健司は、劇中で明らかにされたように村外の人間です。推測ですが彼は電力会社付きの記録映像係で、その縁で摩耶と結ばれたと思われます。
劇中最も獣人化が顕著な摩耶は、おそらくは妊娠を機に退行も伴った変化が進んだのでしょう←綾乃の退行は摩耶の状態の再現にもなっています。
摩耶が元からあの状態であったなら健司はただの変態だし。
もう彼にも摩耶の理性を頼って抑えることが出来ないため足枷が必要だったと思われます。
あたかも交わったかのように印象づけられたあの犬は実は彼女を守る番犬と考えた方が辻褄が合います。
他の村民と違って健司は成人した奏と出会うまで中村家の外にしか現れません。もちろん彼が村民ではなく霊能がないからですが、それでも(奏が繋いだ)摩耶と祖母の縁の力を使って姿を見せるくらいは出来たのでしょう。
なぜ映像を残したのかというと、現代の視点では電力会社の悪業の証拠にしか見えませんが、当時の常識からすると(公式には)犬鳴村は取り残された未開の村で、集落をダムに沈めても彼らに恩恵をもたらす好機と世間にプレゼンする資料となります。
非人道な部分は、既に摩耶と恋仲になり村寄りの立場に変わった健司が秘密裏に残していたと考えられます。
「日本国憲法…」の立て札はこのダム計画が政府の後押しがあることの隠喩だと思われます。
どんな身分でも管理さえすれば国の脅威とはなりませんが、里の異能は潰すべき脅威と考えたのは想像に難くありません。
本題に入ります。
この映画は成宮健司の計画の物語です。
犬鳴村の血を引く中でも際立った異能を持つ奏という存在の出現をひたすら待っていたのです。
幼少時から見守る中で、いずれ彼女は湖に沈む直前の世界に閉じ込められた自分たちの赤子を現実の世界に連れ出す力を持つに至ると確信を得たのでしょう。
村民もろとも村がダムに沈められた事実は変わりませんが、摩耶の我が子を守ろうとする力が出産直後で時間を止めたのだと思います。つまり結界が作られたのです。
その結界を破ることができるのが奏という訳。
さて、そんな村に入るのに必要なのは犬鳴村の血族であること、血族に伴われていること。
トンネルに入りさえすれば、悠真や康太のように血族なら村内に入ることが出来ますが、村民ゾンビの洗礼を受けてしまいます。
電話ボックスで午前2時に電話を受ければ、結界が開きブロックにも邪魔されず入村出来ます。
血族でなかったり同行していなければ殺されます。単純に村にとって必要ではないから。
かっての電力会社の所業の写し絵です。
冒頭のシーンの明菜が、悠真が近くにいる間は無事で、彼が離れた途端に災難に遭っているのは偶然ではありません。
奏を見守る正義の味方という印象がある賢司ですが、冷酷というか必死です。
迷い込んだ悠真と康太を、奏を誘う餌に使ったくらいですから。
フィルムがどういう内容かを知っていたのが、彼が撮影したことの根拠です。なぜ中村家にあったのかまではわかりませんが、ダム建設当時に健司本人がどこかに隠しておいて、その後我が子に託したのかも。
今まで敷地の縁で見守ることしかできなかった健司が家に入れたのは、もちろん奏のおかげ。
フィルムの映写は奏の力の解放と同時に、フィルムに閉じ込められていた村人の怨念も解き放ちました。
時系列としておかしいかもしれませんが、その時に初めて村民ゾンビが村外の病院や電話ボックスに現れることができるようになったのです。
つまり時を超える(摩耶の力と対になっている)奏の力が媒介となって、過去の明菜や病院や電話ボックスに呪いをもたらすことが可能となったということです。
舞台が
①ダム湖に沈んだ村
②その村の中の出産直後で時間が止まった一角
③出産時と同時刻の中村家
④現代と過去が混在するトンネル
⑤現代の森田家がある街
と時間を超越しているので、清水崇監督作に慣れてないと理解が難しいかもしれませんね。
もうひとつ忘れてならないのは、笹本旭の存在です。
はじめ中村隼人の言うように、犬鳴村の子どもらしき捨て子のひとりかと思ったのですが、年齢が合いません。逆に時系列が合わないのなら、それは奏の仕業じゃないかと気づきました。
フィルムの解放時が一番可能性が高いと思われますが、犬鳴村の妊婦を呼び寄せたのは奏です。奏が旭を担当したのも偶然ではなかったのです。
現世に奏、康太、旭がいれば犬鳴村の復活も可能ですね。
ラストの奏の犬歯は復活の狼煙なので、村的にはハッピーエンドです。
レビューを見ると皆さん揃って、摩耶のメタモルフォーゼ中になぜ逃げないのか?と仰る。
あれ?その異様な丁寧さがあるから主人公の正体に繋がるのだけど?
つまり
①ラストの奏の血族の証明の前振り。
奏の行く末を彼女(と観客)に学習させている。
②赤子を犬鳴村という閉じた世界から現実世界に連れて行く力を持っている奏をようやく曽祖父が連れてきて預けたのにもかかわらず、
赤子の母(曽祖母)は連れ去られることに怒っていて、
奏は逃げることと連れ去ることで葛藤している。
③足がすくんでいる。
以上の複合した要因ゆえ。
あと、ゾンビの群れに戸惑うレビューも。
いや本来の主人公は「村」やで。
→後半から失速…
だ・か・ら・本当に怖いのは後半。
優しげな顔の裏に、曽孫たちの気持ちなんか眼中にない成宮健司の計画が着々と進んでいるの。
追記:
これは設定から逸脱しているかもしれないけれど、希望として〜だったら良いなという意味で書き足します。
明菜は悠真の子を妊娠していて死にましたが、悠真の子ならクォーターながら犬鳴村の血族なので本来は死ぬべき存在ではなかったはずなんです。
悠真もゾンビの中に明菜を見つけなければ、姉弟とともに脱出していたはずなんです。
もし奏のように、僕に時間に干渉する力があれば、死を無かったことに出来ないなりにもどうにかしてふたりの子をこの世に残す方法を探そうとするでしょう。
で、思いついたのが落下する明菜の時間を一時過去に遡らせて、出産させること。
つまり奏の患者の旭は悠真の子どもで、幽霊の母は明菜。
もちろん無理筋なのはわかってますが。
そうすると血族の設定は合うんだよな。
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