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私の、すべらない話 ⑤ チョコレート

僕が高校時代、野球に打ち込んでいたある日のすべらない話。

その日は、2月14日、バレンタインデーだった。

まあ、期待はしていなかった。

校内で行われる、チョコレートのやり取りに、鬱陶しさ、すら感じていた。

案の定、その日女の子からチョコレートをいただくことはできなかった。

放課後、部活の練習前。

当然、戦績の話になる。

戦績はもちろん、もらったチョコレートの数。

まあ、当然イケメソ君には、チョコレートが3個、4個。

僕たちは不公平に感じていた。

一極集中じゃないか!?

おかしい!

部室では、文句を言う僕たち負け組。イケメソ君たち勝ち組。それを見て笑うマネージャー。

そんな構図ができていた。

「だいたいあんたら、練習前にそんなしょうもないこと言ってんと、はよ野球してこい!」

マネージャーにケツを叩かれ、やっと練習が始まった。

こんなにも気合いが入らない練習は、年に数回あるかないかである。

早く家に帰りたい。

そう思っていた。

練習後、部室で帰りの支度をしていた。

今日のことは、明日には忘れてるやろ!

わいわい、そんな会話をしながら制服に着替える。

すると、僕の横で着替えていた、負け組の1人が、ふと異変に気付いた。

我々、負け組に所属していた、竹村(仮名)の姿がない!と。

どこに行ったんだ?

そうこうしているうちに、竹村がニコニコして帰ってきた。

明らかに、チョコレートが入っている箱を持って。

部活が終わってから、ある女の子に呼び出されたので、ついて行くとチョコレートをもらったそう。

憤怒。怒り。敗北。悲観。喪失。絶望。

いろんな感情が僕たちを支配した。

「たけむらー!!」

負け組からの怒号がとぶ一方で、勝ち組からの賞賛の声が竹村に送られる。

この時ほど負け組が感じる悲壮感は尋常じゃない。

しかし、ここで終わりじゃなかった。

泣く泣く帰ろうとしたその時。

キャプテン(負け組)が叫んだ!

まだあきらめるな!

こっそりチョコレートを渡したい子が、俺たちの下駄箱にチョコレートを置いているかもしれない!!

この時ほど希望に満ちたキャプテンを見たのは、初めてだったかもしれない。

負け組は、部室の前に出た!

準備体操をする。

屈伸。しん脚。アキレス腱。

この日、1番気合いの入った体操。

ランニングをするとき同様の整列をする。

ランニングをして、校舎の玄関へ向かった。

玄関に着く。

下駄箱は玄関のドアを開けてすぐのところだ!

ガラス越しに堂々と下駄箱が並んでいるのが見える。

ドアノブに手をかけるキャプテン。

一言、負け組達に言う。

いいか?俺たちはどんなときも、仲間を信じて戦ってきた!今から、下駄箱を見に行く!どんなことがあっても俺たちは仲間だ!いいな!?

おー!


と答える仲間(負け組)たち!


よっしゃ!!


キャプテンがドアを開けようとした!


ところが・・・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


ガシャーン!


・・・・


・・・・


すでにカギが、かかっていた・・・・入れず


・・・・


・・・・


・・・・


翌日の朝確認した。



全滅であった。



・・・・



・・・・


・・・・


おしまい。



今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました☺️✨

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