私の、すべらない話 ④ 石塚君
これは、とある小学校教員の友人から聞いた話。
その友人が、小学校の教壇に立ってまもない頃。
友人の学級で、起こったすべらない話です。
友人の学級には、絶対に挙手をしない石塚君(仮名)という男の子がいた。
どんな簡単な質問でも、決して手を挙げることはなかったという。
ある日の授業。
友人がある問題を子供達に出した。
読書、と言う文字を黒板に書いた。
友人「この字、なんて読むか分かる人?」
ある男の子が素早く手を挙げた。
友人「はい、〇〇君」
〇〇君「よみしょ?ですか?」
「えー!!違うよ、どくしょだよ!!」と言う声があちこちで聞こえる。
友人「確かに、よみしょ、じゃないね。わかっている人もたくさんいると思う。答えはどくしょだよね。でも、〇〇君がこうやって、発表してくれたおかげで、なるほど、違うのか。って気付いた友達もいるかもしれない。〇〇君のおかげで、勉強になった人もたくさんいると思うんだ。そして何より、〇〇君が一番勉強になったと思うし、たくさんの人たちを助けることができたんだよ!!だから勇気を持って、挙手して、自分の考えをどんどん言うことはとても大切なことなんだ。○○君に拍手!!」
周りの子たちの、「おおー!!」という歓声!
鳴り止まない拍手!
決まった!
○○君をヒーローにした俺は、天才!
優越感に浸る友人。
天に召されんと、神光を浴びる神の如く。
羽が生えて、宇宙へとゆっくり、上がっていく。
そんな気持ちだ!
友人「さいこー!」
そして、何よりも子供たちの笑顔が眩しかった。
さて、そろそろ授業も終わりかな?友人はちらりと腕時計を見た。
すると、その時だった!
あの石塚君がいきなり立ち上がったのだ!
みんなの視線は石塚君に集まる。
時の流れが止まる。
固唾を呑んで皆が見守る。
そして、一言。
「先生、もう一回最初から言ってください。」
その時すでに、友人の羽は折れていた。
むなしく鳴り響くチャイムであった。
おしまい。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
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