2-教える技術19

【コーチング】07 心の習慣はなかなか変えられない

火曜日は「教える技術/学ぶ技術」のトピックで書いています。しばらくコーチングの話題で書いています。

前回は、個人の達成を邪魔するものは、そのプロセスの途中で諦めてしまうことだと言いました。諦めてしまうのは、その人が持つ「不合理な信念」(エリス)、アドラー心理学で言えば「私的感覚」が継続的な努力を邪魔するからです。そうすると、自分の信念について話し合ってそれを妥当なものに変えていくことがコーチングの大切な活動となります。

不合理な信念の代表的なものが「私は完璧でなければ価値がない」や「私は他者に勝たなければ価値がない」というようなものです。しかし、現実は、自分が完璧であることはほとんどないし、他者に勝つことも負けることもあるし、そしてそれは自分の価値とは関係がないということなのです。

とはいえ、こうした信念、いわば「心の習慣」はなかなか変わりません。それは、たとえばテニスのフォームを変えるのが難しいのと同じです。いったん身についたフォームは、もっと良いフォームのお手本をコーチから見せられたとしても、自分ではなかなか変えられません。手本を見せられて、「ああ、そういうふうにすればいいんだ」とわかっていても、いざ自分でやってみるとすぐには変わらないのです。

それほど習慣の力は強固です。しかし、「こういうふうに変えるんだ」と決心して、何度も何度も挑戦して少しずつ変えていくことはできます。少し変えてみて「これでいける」ということを確認して、それを続ける。ときどきは元に戻ってしまうこともあるでしょう。しかし、また変えるべき方向を確認して挑戦していく。そうするうちに新しいフォームが身についていくでしょう。

古い習慣を新しい習慣に置き換えるためには、地道なトレーニングと相応の長い時間が必要です。気を許すと、すぐに元の心の習慣に戻ってしまいます。それは、その方が楽だからです。楽だったからこそ、その習慣に固定していたのです。「私は完璧でなければ価値がない」や「私は他者に勝たなければ価値がない」というような心の習慣は楽なのです。なぜならば、それを理由にして努力をしなくてもいいからです。「いくら努力をしても完璧にはならない→だから努力しない」「いくら努力をしてもすべての人に勝つことはない→だから努力しない」という(不合理な)ロジックです。

そうした不合理な信念について話し合い、そうした心の習慣を変えていくためにはどうしようかと相談するのがコーチの仕事です。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。定期購読者が増えるたびに感謝を込めて全文公開しています。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。テーマは曜日により、(月)アドラー心理学(火)教える/学ぶ(水)研究する(木)お勧めの本(金)思うこと/したいこと(土)経験と感じ(日)お題拝借で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。