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(046) レビュー論文の書き方:その一例

『日本労働研究雑誌』から論文執筆を依頼されました。同誌の2020年8月号は特集「学び直し」です。その号に「社会人の学び直し:オンライン教育の実態と課題」というタイトルで16,000字で書きました。

レビュー論文ですので、先行研究を調べます。「学び直し」で研究論文を検索するとたくさんはありません。それでも、コアとなる研究を見つけて、その引用文献を起点にして探し直すと、かなり見つかりました。その多くの論文は普段は私が読むことのないジャーナルに載っていて、とても勉強になりました。

4月いっぱいで50本の論文と本を読みました。そのうち30本を引用して、5月いっぱいで16,000字を書きました。下の写真は、マス目での進捗管理をしているところです。1マスで1000字を現していて、書いた分量に合わせてマス目を埋めていくのです。

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以下の記事では、レビュー論文を書きながらその手順について気づいたことをまとめています。どんな研究をするにしても、先行研究のレビューは必要なステップです。この例を見て何かヒントになればうれしいです。

・学術文献に特化した検索サイトで先行研究を探す

まずはキーワードを手掛かりにして学術論文の検索をします。お勧めは次の2つのサイトです。

・J-STAGE:日本の学術論文を網羅しています。公開されている記事はダウンロードできます。

・Google Scholar:学術的な記事に特化したGoogle検索です。スキャンされた本の内容も検索対象に入っていますので、強力です。ただし本のすべてがスキャンされているわけではありません。

https://scholar.google.co.jp

・ダウンロードした論文を整理する

ダウンロードした論文ファイル(PDF形式)は、次の形式でファイル名を付けておくと整理しやすくなります。

「著者のイニシャル+著者名+出版年+キーワード(あるいは雑誌名)」
(例)「K向後千春2009メディア教育研究」

著者のイニシャルを先頭につけておくのは、ファイルをアルファベット順にソートできるようにするためです。「キーワード(あるいは雑誌名)」の部分は内容を思い出すのに便利なようにつけるものですので、厳密に考える必要はありません。

文献ファイルは1つのフォルダにまとめておきます。下の写真のような感じです。これがだんだん増えてくると原稿に着手すべき時期がわかります。フォルダになっているのは、同類のファイルが複数ある場合です。

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文献整理用のアプリはいくつかあります。しかし、100以内の文献数であれば、単純にファイルとフォルダで整理するのが一番簡単です。

・論文は印刷して読むべきか

ダウンロードした論文は、そのままスクリーンで読むか、プリンタで紙に印刷してから読むかは好みのわかれるところでしょう。もし印刷するのをいとわなければ、マークやメモするのに便利です。もちろんPDFファイルにも、マークやメモはできますけれども、一覧性には欠けます。PDFファイルの利点はキーワード検索ができることですので、検索が必要なときにはPDFファイルに戻ればいいのです。

印刷して読み終わったものは、物理的なファイルに綴じ込んでいくといいでしょう。この厚みには、「さあ書くぞ」という気分を盛り上げてくれる効果があります。

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・読んだ論文のトピックを1枚のカードに引用できる形でまとめる

読んだ論文で、引用する価値があると判断すれば、そのメモを1枚のカードに書いていきます。これも手書きで書くのか、あるいはタイプするのかは、好みの問題です。しかし、わざわざ手書きで書くことによって、その内容を吟味できるという効果があります。

下の写真は、論文を読んで引用したいと思った内容をメモしたものです。このメモがたまってきたら、分類して近いものを集めたり、その順番を考えて並べ替えたり、という作業を行います。下の写真は、順番が確定してA4の紙に貼り付けた状態です。

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・カードを並べて全体像を描く

カードを並べていくのと並行して、全体像をマップとして描いていきます。これも箇条書きで書くのか、あるいはマップ的な図として描くのかは、好みによります。私は、マップを描くのが好きな方です。下の写真は、マップの一部です。

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ここまでできたら、あとは書いていくだけです。マップに従って、章立てをして、見出しをたてます。それに従いつつ、論文のメモや元の論文を再読しながら文章を書いていきます。

以上が私の場合のレビュー論文の書き方です。何か参考になるところがあればうれしいです。

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