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010 [教える技術] オンライン授業は不十分な対面授業ではなく、その拡張である

世界はコロナの流行があっても、その条件下でなんとかやっていこうとするニューノーマルの生活の方法を模索しています。コロナの流行は災難ではありますけれども、オンライン教育の方法が一気に広まり、浸透したという点においては、社会全体の進歩と捉えられるかもしれません。そこまで、日本におけるオンライン教育の進展は遅々としたものでした。この文章では、オンライン授業の流れをふりかえりながら、それが単なる対面授業の代わりではないことを主張したいと思います。

■2000年以降のオンライン授業の流れ

2000年代に入ってから、インターネットが当たり前になり、その中で、教育の中にオンライン学習が入っていくという方向は確実なものとなりました。しかし、その進展はゆっくりとしたものでした。それでも、教育が対面授業からオンライン学習中心になるためのきっかけになったかもしれないブームはありました。

・「反転授業」のブーム

ひとつは「反転授業」です。アメリカの高校の授業改善からスタートした反転授業は、まず授業の前の予習として先生が作った講義ビデオを生徒が視聴します。その上で、教室での授業は、実習や実験、討議などを中心とした活動、あるいは教員が個別指導をするための時間にするというものでした。

反転授業は、対面授業とオンライン学習を組み合わせた1つのパターンです。このような授業を、一般にブレンド型学習 (Blended Learning) と呼びます。反転授業、あるいは反転学習 (Flipped Learning) は、ブームとなり、日本でも数多くの実践が行われました。

私も大学で反転授業を2008年〜2010年に渡って実施しました。その実践の内容と評価については次の論文にまとめてあります。

向後 千春, 冨永 敦子, 石川 奈保子 (2012) 「大学におけるeラーニングとグループワークを組み合わせたブレンド型授業の設計と実践」日本教育工学会論文誌 36 巻 3 号 p. 281-290

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/36/3/36_KJ00008514505/_pdf/-char/ja

反転授業は2010年代に入って、中等教育を中心にたくさんの実践がされるようになりました。

・MOOCのブーム

もうひとつは、MOOC(大規模オンライン公開コース)でした。そのスタートは、反転授業よりも早く、2001年にMITがオープンコースウエア (OCW) を公開したことに始まります。これによって、MITのほとんどの講義をインターネット経由で、どこでも無料で視聴できるようになりました。

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