【教える技術】相対的メッセージから絶対的メッセージの幅を考える
火曜日は「教える技術/学ぶ技術」のトピックで書いています。しばらくワーマンの『理解の秘密―マジカル・インストラクション』を材料に書いています。
前回は、インストラクションは、使命、最終目的、手順、時間、予測、失敗の要素からなるということを説明した。特に、使命(Mission)と最終目的(Destination)を区別する。たとえば、卒論を書いてもらうことは最終目的だけれども、その使命は問題提起、データの読み取り、文章による説得といった応用範囲の広い基礎スキルを身につけてもらうことだ。
インストラクションは、相対的メッセージから絶対的メッセージまでの幅がある。たとえば卒論なら、「各章をもう少し詳しく書いてください」というのは相対的メッセージであり、「全体で50ページを超えるように書いてください」というのは絶対的メッセージである。相対的メッセージでは、ある受け手はどうしたらいいかわからないかもしれないけれども、別の受け手はもっと詳しく書くべき部分を探してそこに加筆するかもしれない。一方、絶対的メッセージでは、受け手は一番簡単な方法、たとえば図表を大きくするなどして目的を達成しようとするかもしれない。その場合、送り手の使命は伝わっていないことになる。
このようにインストラクションは常に相対的メッセージから絶対的メッセージの幅のどこかに位置する。絶対的メッセージを多用すれば、受け手の創造性を奪うことになる(図表を大きくするというのは送り手が意図しない創造性であるかもしれないけれども)。かといって相対的メッセージばかり送っていれば、受け手は戸惑う時間が多くなるだろう。この問題を解決するためには、受け手を観察することが必要だ。受け手がどのように行動するか、あるいは戸惑っているかを観察して、それによってメッセージの質を変えるようにすればよい。
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