(153) イアン・パーカー『ラディカル質的心理学―アクションリサーチ入門』:(2) アクションリサーチとは何か
2021年9月12日(日)
イアン・パーカー『ラディカル質的心理学―アクションリサーチ入門』を紹介しています。前回の記事では、アクションリサーチの前提として、研究とは道徳的・政治的な活動であるということと、自分の研究活動を反省(省察)することについてまとめました。
今回は、アクションリサーチとは何か、それをどのように実践するかということについてまとめます。
・アクションリサーチ(実践研究)とは何か
アクションリサーチとは、研究活動を未来構想的な政治的実践へと変革する活動です。自分の研究活動が、そのスタートから何らかの政治性を帯びていることを自覚しなければなりません。そのように研究を捉え直すと、大学や研究所などの拠点、知識、理論、方法といった研究に関わることがらについてもまた捉え直すことになるでしょう。
(1) 制度的拠点:大学や研究所などの制度的拠点は、アクションリサーチを妨害する側面をある程度併せ持っています。研究的な拠点は、我々がアクションリサーチをすることを可能にしてくれると同時に、そこに参加してもらいたいと思っている人がそのために参加を拒否する場合もあります。これを克服する1つの方法は研究組織の内部を外から見えやすくすることです。
(2) 知識:アクション(実践)から生成される知識が、リサーチ(研究)によって「発見」される知識と同じであるとは限りません。実践を通して生成される知識とはどんな種類の知識なのか、実践の中では「アカデミックな研究」は取るに足らないのなのではないか、ということを自問しなくてはなりません。たとえ学問的な真実を発見しても、それが現状の肯定と温存にしかならないこともあります。
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