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【注目記事】性格は変化する・しない/エクステンション「小説教室入門」

土曜日は「注目記事とヒント」を書いています。Facebookでシェアした記事を取り上げて感想やコメントを書きます。

108 性格は生涯にわたって変化する(しないものもある)

 しかし、性格スキルは大人になってからも、そして年をとってからも伸ばしていけることを忘れるべきでない。米イリノイ大学のブレント・ロバーツ教授らはこれまでの研究を総合し、「外向性」を「社会的優越」(自己主張が強い性向)と「社会的バイタリティー」(一人を好まず群れたがる性向)に分けた上で、年齢によるビッグ・ファイブの各因子の変化をみた(図参照)。
 これをみると「社会的優越」「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」は長い人生を通じて伸び続けることがわかる。一方、「社会的バイタリティー」「開放性」は10代で伸びるが、後の人生ではむしろ低下している。ビッグ・ファイブの中でも人生の成功で特に重要な役割を占める「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」については、10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きいことが着目される。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25608940S8A110C1KE8000/

これは日本における大規模調査でも同様の結果が得られている。

川本哲也・小塩真司・阿部晋吾・坪田祐基・平島太郎・伊藤大幸・谷伊織(2015)ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性の年齢差と性差:大規模横断調査による検討 発達心理学研究 26(2), 107-122

本研究の目的は,大規模社会調査のデータを横断的研究の観点から二次分析することによって,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性に及ぼす年齢と性別の影響を検討することであった。分析対象者は4,588名(男性2,112名,女性2,476名)であり,平均年齢は53.5歳(SD = 12.9, 23-79歳)であった。分析の対象とされた尺度は,日本語版Ten Item Personality Inventory (TIPI-J; 小塩・阿部・カトローニ, 2012)であった。年齢と性別,それらの交互作用項を独立変数,ビッグ・ファイブの5つの側面を従属変数とした重回帰分析を行ったところ,次のような結果が得られた。協調性と勤勉性については年齢の線形的な効果が有意であり,年齢に伴って上昇する傾向が見られた。外向性と開放性については性別の効果のみ有意であり,男性よりも女性の外向性が高く,開放性は低かった。神経症傾向については年齢の線形的効果と性別との交互作用が有意であり,若い年齢では男性よりも女性の方が高い得点を示した。

性格は、自分でトレーニングして変えていけるような「スキル」なのだろうか。とすれば、真面目さ(勤勉性)、精神的安定性(神経症傾向の逆)、協調性をどのように自己トレーニングしていけばいいのかという課題が出てくるだろう。もちろん、それを自分でトレーニングすることがなんらかのメリットをもたらすとしてだけれども。

しかし、一方でこのようにも考えられるだろう。年齢が進むにつれてさまざまな状況と課題に直面し、それに対処することで特定の結末を体験する。その体験の蓄積がその人の対処方法に影響を与え続ける。その結果として性格特性として測られるものが変化していく。あるいは、これは本人の意図によらない「社会的トレーニング」と呼べるのかもしれない。その結果として、社会的な適応度が良くなるわけだ。

注目したいのは「開放性」(TIPI-Jでは「新しいことが好きで,変わった考えをもつと思う」「発想力に欠けた,平凡な人間だと思う(逆転)」の項目)と「外向性(「活発で,外向的だと思う」「ひかえめで,おとなしいと思う(逆転)」)において、年齢による一定の勾配がみられないことだ。

もしかすると外向性と開放性は、社会的トレーニングを受けても変わらないものなのかもしれない。とすれば、内向的な人に「外向的になれ!」というのも、平凡な人に「革新的になれ!」というのも「無理ゲー」ということになる。それよりはその人の特性を活かしていく環境が重要だということになるだろう。

109 エクステンション講座8年間受講で芥川賞小説

早稲田大学法学部出身の石井遊佳さんによる小説「百年泥」と、エクステンションセンター講座『小説教室入門』を8年間受講した若竹千佐子さん執筆の「おらおらでひとりいぐも」が第158回芥川賞の受賞作に選ばれました。このたびのご受賞を心よりお祝い申し上げます。
https://www.waseda.jp/top/news/56769

このエクステンションセンター講座の「小説教室入門」が気になったので聞いてみたら、八丁堀校で開講しているこの講座のようです。基礎編と応用・統合編ともに1年間に3クール開講していますね。

講義概要を見るとその内容は以下のようです。

やはり、受講生自身が課題として作品を提出してそれを講評するようですね。これで小説の書き方を鍛えるわけだ。こうした訓練を8年間続けると、芥川賞の小説が書ける(可能性が出てくる)わけです。

もちろん、この講座だけでなく日々書くことを鍛錬しているのだと思います。でも、きっとこの講座に参加することを自分のペースメーカーにしてきたのではないでしょうか。そんなことを想像するとエクステンション講座のこれからの姿が見えてくるような気がします。

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