035 [おとなの研究] リサーチクエスチョンの立て方
研究の中心にあるのが、研究上の問い「リサーチクエスチョン」です。研究する対象をテーマとして決め、さらに細かいトピックまで絞り込んだら、リサーチクエスチョンを立てるステップになります。リサーチクエスチョンはトピックをどのような角度で切り込んでいくかということにあたります。ですので、同じトピックを扱っていてもいくつものリサーチクエスチョンが立てられるのです。今回はリサーチクエスチョンの立て方について説明します。
リサーチクエスチョンの前にクリニカルクエスチョンを立てる
リサーチクエスチョンというのは、その研究のスタートでもありゴールでもあります。研究が継続していく限り、何度も作り直されていきます。
リサーチクエスチョンは一度立てたらそれで終わりというわけではなく、研究が進むにしたがって、何度でも考え直され、改定されていくものです。まさに、研究はリサーチクエスチョンに始まり、リサーチクエスチョンに終わるのです。
リサーチクエスチョンを立てるのは難しいものです。最初に立てたリサーチクエスチョンをその段階で評価するのはほぼ不可能です。指導する方も、このリサーチクエスチョンがどのように実を結んでいくか予測がつかないからです。
立てるのが難しいリサーチクエスチョンだけを解説した本があります。福原俊一『リサーチ・クエスチョンの作り方 第3版』(特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構, 2015)です。実例は医療系のものですけれども、参考になります。
この本の中で、クリニカルクエスチョンという言葉が出てきます。これは臨床現場にいる人が現場で漠然と感じた疑問ということです。リサーチクエスチョンを作る前に、必ずクリニカルクエスチョンを感じているはずです。
現場で感じた、悩み、わからないこと、つまづき、問題点、改善が必要なこと、理解できないこと、学んだ知識どおりではないこと、こうしたものすべてがクリニカルクエスチョンになります。で、ふつうはそれを素通りしてしまうわけです。「まあ、いいか」と。でも研究をしている人は違います。
その現場で感じた違和感を「丁寧に言語化していく」。それがクリニカルクエスチョンになるということです。そうしたものが集まってくると、何かパターンというか文脈のようなものが明らかになってくる。また、カテゴリーや概念のようなものが見えてくる。そこまでいくと、リサーチクエスチョンまであと一歩ということになります。
良いリサーチクエスチョンの要件 “FINER”
リサーチクエスチョンを立てる前にクリニカルクエスチョンを言葉にしていくということを書きました。現場で感じた、悩み、わからないこと、つまづき、問題点、改善が必要なこと、理解できないこと、学んだ知識どおりではないこと、こうしたものすべてがクリニカルクエスチョンになります。
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