9-号外_バラ

「オトナの研究」3本(2017年8月のnote記事より)

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今回は、2017年8月のnote記事から、「オトナの研究」3本をまとめてお届けします。

07 現場の観察から要因/変数を見つけだすのがWhat型の研究の第一歩。
08 キーワードの概念を明確にする。
09 「自分だけが気づいている」という楽しさを一瞬でも味わったら、先行研究の調査に移りましょう。

07 現場の観察から要因/変数を見つけだすのがWhat型の研究の第一歩。

前回は、自分の現場の中で「この問題は何なのか」という意識を持つことで「What型の研究」をスタートさせ、それを一般化しようとすると「法則定立的」な研究に、その一回性の中の構造を見ようとすると「個性記述的」な研究に進むということを書きました。もちろんこの両者の視点を持って研究を進めることもできます。

さて「これは一体どういう問題/現象なのか」というWhat型の研究の視点を持って、現場を観察していくと、その現象を起こしている要因が徐々に透けて見えてきます。前々回に「グループワークにおけるフリーライダー」問題を取り上げました。そこで働いている要因にはどんなものがあるでしょうか。

ある人たちは、もともと「ただ乗りしやすい」性質を持っているのかもしれません。これは、個人の性質/傾向の要因です。あるいは、そうした人たちの「授業に対する考え方」なのかもしれません。もし「授業ではできるだけ楽をしてやり過ごすのが良い」と考えているのであれば、グループワークにおいてもそれに即した行動をとるでしょう。あるいは、そもそも「授業に対するやる気」があまりないのかもしれません。とすればグループワークでもまた消極的になるでしょう。これを「動機づけ」と呼ぶことがあります。

このような「個人の要因」以外にも要因はあります。グループワークのやり方が、ただ乗りしやすいものであったとすれば、個人の性質によらず、ただ乗りしてしまう人が出てきてもおかしくありません。たとえば、10人でグループを編成したとすれば、共同作業に参加しない人が出てきても仕方ないことでしょう。この場合、グループの人数が要因となります。また、グループワークのやり方として、みんなが同じ作業をするようなものであったとしたら「自分1人くらいサボっても他の人がやってくれるだろう」と考えるメンバーが出てきてもおかしくありません。この場合は、グループワークの指示の出し方が要因となります。

このように現場をよく観察していくと、そこで起こっている問題の裏側で働いている要因が透けて見えてきます。それらの要因は、こちら側がコントロールできるもの、たとえばグループの人数、であったり、こちら側がコントロールできないもの、たとえばその人のただ乗りしやすい性質、であったりします。また、この「ただ乗りしやすい性質」というのは仮想的に考えたものですので、本当に存在するかどうかはまだわかりません。

ともあれ、以上のすべてのものを「要因(factor)」あるいは「変数(variable)」と呼びます。変数という言葉には「数」という字が入っていますけれども、必ずしも数でなくてもかまいません。このような要因/変数を見つけだしていくことが、What型の研究の第一歩となります。

08 キーワードの概念を明確にする。

前回は、現場をよく観察することによって、そこで起こっている問題の裏側で働いている要因が透けて見えてくることを書きました。それらの要因には、こちら側がコントロールできるものも、できないものもあります。これらすべてのものをまとめて「要因(factor)」あるいは「変数(variable)」と呼びます。

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