テストとはその人の不十分なところを発見して、完全習得を支援するためのもの。
火曜日は「教えること/学ぶこと」のトピックで書いています。ここしばらくは、授業や研修の設計と実施について書いています。
新しい知識を自分にあったスピードで、しかも完全に理解する方法として「個別化教授システム=PSI」を紹介しています。その特徴は以下の4点です。
(1) 講師は講義をせず、学習者は用意された独習教材を使って、自分のペースで学習を進める。
(2) 1つの学習ユニットが完全に理解できたかどうかは、通過テストに合格することで保証される。
(3) プロクターは、学習者10人程度に対して1人の割合で用意され、学習者から求められたときに、個別に指導する。
(4) 講師は授業内容としての講義をしないが、動機づけのため授業内容に関連した短い話をすることができる。
前回は、講師の話はそれが必要とされたときに提供されるのが効果が高いということを言いました。ここから、講師の話をビデオにしておく意義が出てきます。しかも、そのビデオはできるだけ短いものにして、いつでも学習者が参照できるようにしておくのがいいのです。
今回は、(2)の通過テストという仕組みを紹介します。
伝統的な授業や研修では、1つのユニットの時間が決まっています。60分とか90分で終了です。もしその中で扱われた内容を、学習者が完全にマスターできない場合は、学習者自身の責任とされてしまいます。
しかし、当たり前のことですが、学習者にはそれぞれ個人差があります。時間内にマスターできる人もいれば、完全習得するためには時間が足りないという人もいます。時間が足りない人にとっては、少しずつ理解不十分な部分が積み重なっていき、最終的には脱落します。落ちこぼれるわけです。これが学習者全員を同じペースで教えることの根源的な欠点です。
PSIでは、講義に頼らず、独習教材を使って自分のペースで学習を進めるので、自分の必要な時間を使って内容をマスターすることができます。この根底にあるのが「キャロルの時間モデル」という考え方です。「時間モデル」とは、それぞれの学習者は自分に必要な時間をかければ、どんなことでも完全習得できるということです。
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