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【教える技術】#14 エンゲストロームの「質の高い知識」の意味
火曜日は「教えること/学ぶこと」のトピックで書いています。早稲田大学エクステンションセンター中野校での「教える技術」講座の内容を連載しています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。
前回までで、ベイトソンの学習2について説明しました。学習2とは、単独のスキルそのものの学習(学習1)ではなく、文脈の中で自分のスキルをどう選択し活かすかということの学習です。
言い換えれば、問題解決のレパートリーを増やしていくことと、個々のレパートリーをどこで活かせばいいのかという文脈の解読力こそが学習2です。高いパフォーマンスを示す人たちは、その人個人の技能というよりも、文脈の解読力という意味で高い能力を持っていると考えられます。そうした人たちは「ビジョナリー/先見の明がある」と呼ばれます。ビジョナリーとは文脈を読み、予測する能力にほかなりません。
ユーリア・エンゲストロームという研究者は「質の高い知識」というアイデアを提案しています。彼のいう質の高い知識とは、組織化されていて、生活実践と結びついていて、多様な形態で表象されるものだということです。つまり、個々の知識がバラバラではなく、体系化されていて、しかも現実の問題と結びついていて、様々な形で活用することができるような知識ということです。
そうした質の高い知識はどのように獲得されるのかということが問題になります。それは、人々とのやりとりや相互行為、談話を通して社会的に共有されるということです。そしてそうした活動の中で、個人がその技能、知識、意識、人格を発達させていきます。このようなモデルをエンゲストロームの「文化・歴史的活動理論」と呼びます。
このような活動の中で得られた質の高い知識は、長い生命を保ち、簡単には消えません。それは試験のために勉強した知識が簡単に脱落してしまうのに対比できます。活動の中で獲得した技能と知識こそが意味あるものなのです。
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