【本】伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』:介入実験と自然実験によるデータで因果を明らかにする。
木曜日はお勧めの本を紹介しています。今回はこの本を取り上げます。
伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書, 2017)
■要約
因果関係を特定できる研究方法は代表的には以下の4つである。それぞれを理解することにより、データの集め方、分析の仕方、分析からの読み取り方がわかる。
(1) RCT (Randomized Controlled Trial):ランダム化比較試験あるいはA/Bテストとも呼ばれる。実験群と統制群にわけ、それぞれにランダムにケースを割り当てる。
RCTができないとき、以下の方法を自然実験 (Natural Experiment) として利用できるかどうかを検討する。
(2) RD (Regression Discontinuity) デザイン:70歳を境にして医療費自己負担額が1割から3割に増えるというように、条件が不連続に変化する事象を利用して、因果関係を推定しようとする。
(3) 集積分析 (Bunching Analysis) :日本の所得税率のように階段状に条件が変化する事象を利用して、因果関係を推定しようとする。RDと違うのは、主体がある程度横軸(たとえば所得)を操作できること。
(4) パネルデータ分析:複数の観測グループに対して複数期間のデータが手に入る場合に適用できる。政府や企業が何らかの施策を実施したとき、その影響を受けるグループと受けないグループがあれば、両者を比較することで施策の影響を検討することができる。
■ポイント
RCTの事例
一定の時間帯に電力価格を上げる介入と介入なしにより実験した結果、価格を上げることが電力消費を抑制することがわかった。
オバマの選挙運動のためのWebで、メーリングリストへの加入を進めるページにおいて、「Sign Up」というリンクよりも「Learn More」のリンクの方が登録率が高かった。A/Bテストの事例である。
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